新規事業開発を成功させるための
イノベーションテック「2大成功例」

 最後にイノベーションテックの活用事例を2つご紹介したい。

 一つ目は、世界を代表するIT企業のSAPだ。同社は先に紹介したIdeaScaleをフル活用し、クラウド型のソリューションを次々と生み出している。

 同社はIdeaScale上で自社のユーザーから5,000件に及ぶアイデアを集め、従業員およびユーザーからの多面的な評価を経て276件の有望アイデア(約5%)を採用している。その上で事業開発を進め、複数の新規事業の立ち上げにつなげている。例えば、同社のSAP Cloud for Customerは、このプロセスを通じて生まれたものだ。

 二つ目は、日本のスタートアップであるSpeeeだ。同社は外部のイノベーションテックの活用ではなく、自社で新規事業開発に特化したシステムを組み上げて新規事業開発の高度化を実現した。

 同社はスタートアップながらも事業開発を積極的に行い、現在はWEB/SEO関連事業、不動産売買、リフォーム、介護など10の事業を展開しており、新規事業開発の成功率は50%と公言している。

 新規事業開発システムのポイントは、調査分析やプロトタイプ検証などをツール化することで新規事業開発プロセスを効率化するとともに、ナレッジを蓄積しているという点だ。これらをシステムで管理することで、新規事業開発の成功率を高めるのに成功している。

 イノベーションテックの活用は、一部のIT企業、スタートアップから始まっている。新規事業がうまくいかないと悩んでいる企業は、イノベーションテックの動向をウォッチするとともに、その活用を検討してみてはどうだろうか。

(フロンティア・マネジメント マネージング・ディレクター 岩本真行)