「多産多死」の事業を管理
続々と登場するイノベーションテック

 一昔前までは、「イノベーションプロセスのDX」をしようにもテクノロジーが追い付いておらず、実装するソリューションが世の中にほとんどなかった。しかしここ数年は、データサイエンスやAIの進化を背景にイノベーションプロセスのDXに資するソリューション、すなわち「イノベーションテック」が続々と登場している。

 2024年現在、国内のソリューションを中心にイノベーションテックの全体像を整理したのが次の図表2だ。

 このように新規事業開発の準備段階での鍵となるアイデア、ヒト、ネットワークをデジタル化するソリューションから、新規事業開発の実行プロセスをデジタルによって効率化するソリューション、さらには準備から実行までのプロセスを横断してクラウド上で管理するマネジメントソリューションなど、様々な切り口のイノベーションテックが出現している。

 例えば、VISITS Technologies社は、新規事業アイデアの質の評価に使えるVISITS formsや、新規事業人材に求められるデザイン思考力を測定するためのウェブテストを展開しており、大手企業の新規事業部門への導入も進んでいる。

 また、米国・IdeaScale社は、多産多死のイノベーション活動を包括的に管理するプラットフォームを提供している。同社のプラットフォームには、アイデアの収集・評価、コンセプトの創出・検証、ソリューション開発まで一気通貫で支援する機能が実装されている。同社のプラットフォームを活用することで、従来はブラックボックスだった新規事業・イノベーションのプロセスがすべて可視化・民主化され、生産性の向上はもちろんのこと社内の新規事業に対する見方やカルチャーの変革も期待できる。

 イノベーションテックは黎明期のため、今後も様々なソリューションが出現すると考えられる。自社特性や状況に応じて適切なイノベーションテックを導入し活用することは、新規事業開発の成功確率や生産性を高めるために必須となっていくだろう。