一方、私が見てきたなかで活性化しているチームは、チームワーク型マネジメントの形になっています。私の観察では、活性化して機動的に動いているチームは、そのチームメンバーのどの2人を選び出しても、常に相談できる状態があります。

 ミーティングを開いても、リーダー中心に話が進むのではなく、いろんなメンバー同士が同意や対案を繰り返しながら話を重ねていきます。

 こういったコミュニケーション形態を、星形コミュニケーションとかWEB(蜘蛛の巣)型コミュニケーションとよんでいます。

 星形コミュニケーションにおけるリーダーの役割は、話し合いを自分が中心となって回すことではなく、メンバー同士が自由に対話できる場をつくることになります。

 こうしたチームワーク型マネジメントの状態になれば、生命体の3要素(個が自律的に動く・双方向のコミュニケーションがとれる・全体としての方向性が共有されている)が満たされる状態になるのです。

マネジメントの変化同書より 拡大画像表示

2023WBC侍ジャパンに学ぶ
有機的チームワークづくり

 組織の部品にならずに、生命体の細胞として、個人がその人らしく輝き、かつ全体としてもパフォーマンスを上げていく。そんな生命体のようなチーム(有機的チーム)をつくることが、これからの組織に大切なチャレンジだと私は考えています。

 2023年、野球のWBCで世界一に輝いた侍ジャパン。メンバーも錚々たるものでしたが、それをまとめ上げた栗山監督の手腕も素晴らしいものでした。

 WBCの後に栗山監督の講演を聞きに行ったところ、一緒に登壇していた易経の先生から、「栗山監督は選手一人ひとりが輝く場をつくったんですね」と言われていました。

 栗山監督は、代表選手がはじめて集まった場でこう言ったそうです。

「皆さんたちは日本代表チームに入ったのではありません。一人ひとりが日本代表なのです」。

 こう言って、一人ひとりに主役意識を持ってもらいました。一人ひとりに主体的にチームのことを考えて動いてほしかったためだと思います。キャプテンも置かなかったようです。そんななかで、自発的・献身的にメンバーに関わっていくベテランのダルビッシュ選手などが現われ、世界一のチームがつくられていきました。

 また、栗山監督は一人ひとりの選手にも丁寧に接している印象があります。各人が自立心を持ち、それぞれの特性が尊重され、「世界一になる」という目標を共有しています。そしてメンバーは、自分のことよりチームのことを優先して、それぞれの持ち場で役割を果たし、いい流れをつなげる。別々の人たちが手を携えて、ひとつの命のようになったのではないかと思います。まさしく、こういったチームプレイが職場や会社で実現できれば、組織は大きく変わっていくと思うのです。