日本と韓国で、生成AIの使い方にどんな違いがある?
これまでのコンピュータの歴史の中で、人々はマウスでGUIベースのアプリを操ったり、ブラウザの検索機能を多く使うようになったり、スマートフォンの画面をタッチしたりして利用してきた。しかし、生成AIが普及した時代では、AIと対話するための画面が主役になると、リートンでは考えている。
この「メイン画面」のポジションを、自社で確保するにはどうするか? その答えが、主要な生成AIのサービスをワンストップで利用できる、生成AIのマルチプラットフォーマーとなることであり、いち早く日本にも進出して、リートンのユーザーベースを拡大することにあった。このため、同社のサービス内容は日韓で基本的には共通だが、日本市場の特性に合わせた機能も用意されている。
たとえば、LINEは元々韓国発祥の技術であるものの、日本のユーザーが圧倒的に多い。そこで、LINE上でChatGPT-4を含むリートンサービスを利用できるチャットボット「リートンAIラボ」は日本でのみの提供となっている。また、先に触れたJapanese SDXLも、Stability AIとの協業で実現した日本独自の画像生成AIで、英語よりも日本語のプロンプトのほうが良好な結果が得られるという特徴がある。
「実は私たちも驚いているのは、日韓のユーザーで、リートンのサービスを利用するデバイスが大きく異なっているという点でした。韓国のユーザーは、効率的に圧縮したプロンプトをコンピュータから入力して利用することを好むのに対して、日本では細かな指定をスマートフォンから入力して利用するユーザーが圧倒的に多いのです。こうした事情を考慮して、モバイルアプリの開発を進めています」(リートン)
韓国はサムスンのお膝元でもあるだけに、逆にモバイルユーザーが多いものと思っていたため、筆者にとってもこれは意外だった。
興味深いのは、リートンのサービス利用率が上がる時間帯や季節だ。午前10時や午後2~3時のピークは企業ユーザーの利用であると推測され、夏休みや新学期開始の直前などに高まるのは、学生たちの自由研究や宿題対応ではないかと推測しているとのことだ。
プライバシーとセキュリティへの配慮
無料サービスの場合、どうしてもプライバシーやセキュリティの点が気になるものだが、リートンではユーザーの個人情報や安全性を守ることを重要視しているという。
たとえば、ChatGPTに関しても、OpenAIから直接供給を受けると入力したデータがAIの学習に使われる可能性があるため、マイクロソフトとの提携によって学習に利用されない仕組みで運用している。今後、提供予定のClaude 3もAWS経由で行い、同じくユーザーが入力したデータは学習に利用されないようになるとのことだった。
また、データの安全を保ちながらサービスを提供するために、社内にもセキュリティの担当者を多く擁し、セキュリティ専門会社による定期的な検証を受けたり、将来的には、この領域でISOの認証を取ったりといったことも視野に入れているそうだ。
一方で、チャット系の生成AIで、誤った情報をあたかも正しい情報のように回答したり、存在しない情報を作りだしてしまったりする「ハルシネーション」が起きた場合には、ハルシネーションの部分を認識し、生成した内容についてユーザーに事実確認を依頼するなどの取り組みを行っている。
こうした取り組みを積極的に進めることで、リートンは無料であっても安心して利用できる生成AI環境を整えているといえるだろう。