クリストフ・ウェバー社長就任から10年。業界内では製薬大手・武田薬品工業の次期社長レース予想が熱を帯びている。特集『薬局・薬剤師 サバイバルダンス』(全24回)の#16では、今年4月の人事異動を経た、最新「ポスト・ウェバー」候補たちを紹介する。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
事業構造再編に1400億円
今年度中の大規模リストラは確実
何度リストラを重ねれば、事業構造再編は成すのか。武田薬品工業は、2024年3月期決算説明会で、コア営業利益率の改善目標達成に向け、24年度より複数年にわたり全社的な効率化プログラムを行うと発表した。事業構造再編費用として1400億円を24年度の業績予想に織り込んでいる。
プログラム内容の冒頭に掲げられているのが、人員の最適化策を伴う組織構造の簡素化。つまりは、人的リストラ予告だ。武田は、プログラムの具体的な内容や実行のタイミングについては現時点で明らかにしなかったが、24年度中に大規模な早期退職募集が行われる可能性は極めて高い。早速、低分子薬の拠点である米サンディエゴの研究所閉鎖も、米メディアに報じられている。
プログラムの目標としては、30%台前半か半ばのコア営業利益率を掲げるが、そもそもクリストフ・ウェバー社長が14年に就任して以来、ここ10年ですでにかなりの「血の入れ替え」が行われてきたはずだ。リストラに係る引当金の膨らみ方は他社を大きく凌駕し、目的使用は累計で1800億円以上に上る。
世界のメガファーマに肩を並べるという名目で断行されるリストラはもはや武田の“お家芸”となり、多くの忠実な社員が涙をのみ会社を去っていった。
しかし、就任10年目となる今年、改めて事業構造改革を公言したということは、これまで重ねたリストラではまだ足りなかったということなのだろう。実際に第一三共には時価総額で抜かれ、パイプライン(開発中の薬剤)のラインアップを見ても、今の勢いだと国内製薬トップの座を譲るのは、時間の問題だ。
このままでは世界のメガファーマに伍することができたのはリストラの回数だけで、「われわれの屍は一体何のためだったのか」という、元武田社員の怨嗟の声が聞こえてきそうである。
とはいえ、かねてウェバー氏は「経営に携わるのは25年まで」と随所で公言してきており、その言葉を信じるのであれば、任期終了まであと1年を切った。
今回の事業構造再編宣言が「結果を出すまで辞めないという意思表示では」という、まさかの「25年以降も社長続行」シナリオを口にする業界関係者もいるものの、改めてポスト・ウェバー候補の顔触れと、それぞれの本命度を占ってみることにする。