2010年代に入って
計画が具体化した背景
地下鉄である東西線にはこのようなぜいたくな施設はなく、増設も難しいが、混雑は放置できない。そこで検討されたのが南砂町駅の2面3線化、つまり都心方面限定の交互発着機能であった。
交互発着駅は遅延吸収の目的上、最混雑区間(木場~門前仲町間)より手前に設置したいが、木場駅は構造上拡幅が難しく、周辺開発が進み利用者の多い東陽町駅も手をつけづらい。高架区間も難しいとなると、現実的な選択肢は南砂町駅だけであり、同時に手狭になっていた駅を大改良しようということになった。
東西線の混雑は今に始まった話ではないが、2010年代に入って計画が具体化したのは、2000年代の都心回帰で東西線の走る江東区、江戸川区の高層住宅化が加速し、利用者が増加したことと、2008年に副都心線が開業したことで、既設線の改良に資金を振り向ける余裕が出てきたことが理由だ。また2010年に猪瀬直樹副知事(当時)が「地下鉄一元化」を迫ったことで、対抗策として「利用者還元の設備投資」を打ち出す必要があった影響も否めない。
遅延吸収の要である南砂町駅に対し、増発を実現するのが九段下~飯田橋間の折り返し設備整備工事だ。東西線の中野方面行き列車は、全てが中野駅か、直通先であるJR中央線の三鷹駅での折り返しだが、両駅の折り返し列車をこれ以上増やすのは難しかった。
そこで中野駅より手前に折り返し駅を確保しなければならないが、輸送障害時に本線上で折り返しできる駅はあっても、本線の運行に影響を与えず、運行の合間に折り返しできる駅がない。そこで注目したのが九段下~飯田橋間に開業時からある列車留置線だ。
本線から分岐する留置線をそのまま折り返しには使えないため、本線のトンネルを留置線につなぎ、これまで走行していた中間の線路を折り返し線にする工事を行っている。こちらも当初は2020年度の完成を予定していたが、2025年度、2027年度と延びている。