鉄道の「商品」であるダイヤをいつ、どのように見直すかは、各社にとって最も重大な経営判断だ。コロナ禍により、終電時刻の繰り上げや度重なるダイヤ改正が行われたが、数年のうちにここまで目まぐるしく変わり、利用者は困惑していることだろう。利用者の激減と巨額の赤字という前例のない危機に対応せざるを得なかった事業者を責めることはできないとしても、どのようなダイヤ改正であればユーザーフレンドリーだったのだろうか。今回は、そのヒントになるかもしれない西武鉄道の対応について解説したい。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
新型コロナの収束後の
各社のダイヤ状況は
京葉線の快速問題が世間を騒がせたように、列車のダイヤ設定は難しい。あちらを立てればこちらが立たずで、沿線の万人が納得するダイヤは存在しないからだ。しかも、一度設定した優等列車、直通列車は簡単に削除できないので、継ぎ足しを重ねていくと不合理が蓄積されてしまう。
かつての国鉄は新線開業や設備改良にあわせて運行区間や種別を全面的に見直す「白紙改正」を定期的に行っていたが、近年では小田急の複々線化完成など、よほどのことがない限り行われることはなくなった。鉄道の「商品」であるダイヤをいつ、どのように見直すかは、各社にとって最も重大な経営判断と言えるだろう。
そんな中、鉄道事業を襲ったのがコロナ禍だった。2021年3月のダイヤ改正ではまず終電時刻の繰り上げが行われ、利用者の減少に対応した本格的な「リストラ」は、2022年3月以降の3度のダイヤ改正で行われた。
ダイヤ改正には内容・規模にもよるが、素案の作成から関係部門、直通先との調整まで1年以上の時間を要するため、最新のダイヤは1~2年前の想定、課題認識のもとで作られていることになる。これが平時であれば誤差にすぎないが、状況が目まぐるしく変わるコロナ禍への対応は難しい。今、各社のダイヤはどのような状況になっているのか。