JAXAのスペースドームに並ぶ歴代ロケットPhoto:PIXTA

宇宙開発をめぐって、各国の政府や企業がしのぎを削っている。その中で日本も、性能・コスト面で欧米と渡り合える新型ロケット「H3」を開発中だ。宇宙ビジネスが一般化する未来に、日本の技術はどんな貢献ができるだろうか。※本稿は、眞 淳平『ニッポンの数字――「危機」と「希望」を考える』(ちくまプリマー新書、筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

人間の生存域を拡張する
各国の官民あげた宇宙開発競争

 日本人、そしてヒトの「生存域の拡張」に向けた取り組みが始まっています。それが、「宇宙開発」。ここでのキーワードは「競争」です。日本も含めた主要各国を巻き込んだ米中の、さらに民間企業の間での、激しい開発競争が行われています。

 その場所は、(1)「宇宙」とされる、高度100kmよりも上の領域(国際航空連盟「FAI」による定義)、の中でも、同200~1000kmの「低軌道」、(2)同3万6000km付近の「静止軌道」、(3)月、(4)火星、(5)木星とその惑星、(6)土星以遠の惑星、など広範囲にわたります。

(1)「低軌道」(LEO:Low Earth Orbit)では、宇宙ステーションなどが活動しています。日米ロ欧州各国などが参加する「国際宇宙ステーション」(ISS:International Space Station)、中国の「天宮」、が運用中です。

 ISSは、50以上のモジュール(建造物)から成り、その最大のものが日本の実験棟「きぼう」です。きぼうは、「船内実験室」「船外実験プラットフォーム」、実験機材などを格納する「船内保管室」、実験や作業で使う「ロボットアーム」、の4つから構成されています。

 ここでは、骨や筋肉の老化を防止する医療、新たな医薬品開発につながるタンパク質の特性の解明、倒れにくい稲の開発、などといった分野での研究等が行われています。

 この領域では、観光用の飛行がすでに始まっています。米企業ですが、ヴァージン・ギャラクティック、ブルーオリジンなどが、民間の富裕層を対象に、宇宙船を打ち上げています。

 搭乗料金は、ヴァージン社の場合、眼下に広がる地球の姿と、数分間の無重力状態、を体験する数時間のツアーが、1人45万ドル。将来的に、コストが下がり、1人数百万円程度となる可能性、も指摘されています。

(2)「静止軌道」では、多くの「静止衛星」が運用されています。

 静止衛星は、地上から見たとき、止まっているように見えるので、その名がついています。放送衛星や通信衛星、気象衛星の多くが、これに当てはまります。