月面探査のispaceなど、宇宙スタートアップが初の株式上場を果たした今年。さらに今後3年以内にも上場が相次ぎそうだ。それらの宇宙企業に投資するベンチャーキャピタル(VC)の意図とは何か。宇宙をテーマにした投資信託商品も複数登場しているが、一般人が投資する対象としての宇宙企業はどう見るべきなのか。特集『来るぞ370兆円市場 ビッグバン!宇宙ビジネス』(全13回)の#12では、投資対象として見た宇宙企業について取り上げる。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
最初の公開宇宙専業企業になったispace
投資銘柄としての実力は?
4月12日。ispaceは宇宙スタートアップとしては初めて東京証券取引所グロース市場に上場した。
東京証券取引所での記念撮影で、そろいのユニフォームに身を包み、袴田武史CEO(最高経営責任者)の隣で満面の笑みを浮かべて写真に収まる人物がいた。日本ベンチャーキャピタル協会の会長をも務めるインキュベイトファンドの代表パートナー赤浦徹氏である(上写真)。
赤浦氏はインキュベイトファンドを通じ、かなり初期の段階からispaceに出資を行うとともに、他の出資者探しにも奔走してきた。個人でも出資を行っており、インキュベイトファンドと合計で、実に発行済み株式数の32%に相当する株式を保有している。社外取締役にも名を連ねており、インキュベイトファンドは文字通りispaceを全身で支えてきたVCだ。
ispaceは、2年前の第三者割当増資時点に比べて公募価格が79%も低いダウンラウンド上場を敢行した。上場直後に2142円の高値を記録した後、4月26日の月面着陸失敗で株価は暴落。だが、その後の原因究明と今後の計画発表などを受けて回復。7月4日時点で1501円と、なんとか安定的な水準に落ち着いた。波乱含みの上場となった。
宇宙スタートアップが大型資金調達を次々に達成する中から、最初に「ゴール」したispace。上場企業は同社以外にも今後数年間相次ぐことが予想される。VC以外の一般投資家にも宇宙企業に投資する環境が整いつつある、といえるわけだ。
潜在市場は大きく、さらに本特集で詳細に見てきたように、世界にも例がない優れたスタートアップ企業がそろう日本の宇宙市場。「時価総額数兆円の日本の宇宙企業の登場」を予測する専門家もいるほどだ。
では、一般投資家の投資対象として見た場合、宇宙銘柄をどう評価すべきなのか。実は課題もある。次ページから見ていこう。