次の文は、自尊感情を測定するための心理尺度の一部です。新入生のみなさんは、自分自身について、これらの項目がどの程度あてはまると思いますか?

「あてはまらない(1点)」「ややあてはまらない(2点)」「どちらともいえない(3点)」「ややあてはまる(4点)」「あてはまる(5点)」で評価してみましょう。

・だいたいにおいて、自分に満足している
・少なくとも人並みには、価値のある人間である
・物事を人並みにはうまくやれる
・自分に対して肯定的である

 得点が高いほど、あなたは高い自尊感情をもっているようです。心理学者たちは、高校進学を通じて、新入生たちの自尊感情が低下しやすい様子を報告しています。

 具体例を挙げてみましょう。新入生の1人であるB君は、高校進学を通じて自尊感情が下がった1人でした。彼の場合は、入学とともにクラスや部活でも友達がすぐできましたが、彼の自尊感情はしだいに下がっていきました。

 というのも、高校生活で彼が最も大切にしていたサッカー部でのパフォーマンスが納得いくものではなかったからです。練習のレベルやレギュラー層との実力差を日に日に強く感じるようになり、それがB君の自尊感情を低めていったようでした。また、授業にもついていけなくなり、自分への否定的な気持ちはなおさら強まっていきました。

 ある集団に新しく所属することになれば、学業や部活などさまざまな側面で、他者と比較する機会に直面するでしょう。他者を意識しすぎたり、集団の中で自身のパフォーマンスがうまくいかない場合には、自尊感情も一時的には下がるかと思います。

 ただ、長い人生のスパンで見ると、新入生くらいの年代(15歳くらい)は、平均的に自尊感情が「どん底」の時期であることがわかっています。脳の成長にともなって、「自分は何者なのか」「自分は他人からどう見られているのか」「自分と他人はどう違うのか」といったことに、はっきりと気づくようになる時期ですので、自尊感情が下がるのも仕方がありません。

「自分は自尊感情が低いのだ」と過度に悩む必要はありませんが、進学にともなう自尊感情の低下は、やはり他のさまざまな心の「つまずき」と関連することが報告されています。ですので、心の「つまずき」のサインとして、注目に値する心の状態であることには違いないでしょう。