笑顔の女性写真はイメージです Photo:PIXTA

1990年代後半から2010年代序盤生まれの「Z世代」。未来を担う若者は何を考え、どのような価値観をもっているのでしょうか。若者研究機関「SHIBUYA109 lab.」所長として毎月200人のZ世代(around20〈15~24歳〉)と向き合う長田麻衣氏が聞いた生の声から読み解きます。※本稿は、長田麻衣『若者の「生の声」から創る SHIBUYA109式Z世代マーケティング』(プレジデント社)の一部を抜粋・編集したものです。

「等身大」で背伸びしすぎず楽しみたい

 2023年のZ世代の消費におけるキーワードは、「等身大」です。「こう見られたい」と周囲の目線を意識した行動が目立つZ世代ですが、「背伸びしすぎず等身大で楽しみたい」という意識が芽生え始めています。

(SHIBUYA109 lab.トレンド予測2023 画像:『SHIBUYA109式Z世代マーケティング』)(SHIBUYA109 lab.トレンド予測2023 画像:『SHIBUYA109式Z世代マーケティング』) 拡大画像表示

 例えば、ファッション・コスメ部門では、LAやNYなどを中心としたアメリカのファッションスタイルを指す、「海外ガール」に注目が集まっています。22年にトレンドとなったY2Kスタイルに見られたカラフルさだけでなく、ヘルシーな要素もあるスタイルで、体型問わず楽しめることが魅力です。

コロナ禍で「深く狭いコミュニティ」に

 また、モノ・コト部門の新しい写真共有SNS「BeReal」も、「飾らない自分」を共有するSNSです。他のSNSと違ってフィルターなどでの加工ができず、「映えないSNS」ともいえます。そしてアプリからランダムに来る通知に従って、2分以内にスマホのインカメラ・アウトカメラで写真を同時撮影し、投稿しなければいけません。投稿のタイミングを自分でコントロールできないため、飾らない自分を共有できる関係性の友達とだけ共有しています。

 このようにさまざまな部門で、Z世代たちの、背伸びしすぎず「等身大の自分」で楽しめる消費を求める意識が見られています。

 この「等身大」というキーワードの背景には、等身大でいられるコミュニティが確立したことが挙げられます。コロナ禍で新しい出会いも減り、人間関係が精査されたことから、信頼関係が確立した深く狭いコミュニティに属する仲間との時間を重視するようになりました。浅く広く、多くの人の目を気にしていた彼らが、「自分らしさ」を尊重してくれる安全圏となるコミュニティを持つようになったことで、等身大の自分でいることを選択しやすくなりました。

 また、ややネガティブに見えるかもしれませんが、等身大でいられるフィールドを選ぶことで、「失敗を回避したい」という考え方もあるようです。