そうすると、「いやいや先生、何をおっしゃるんですか? うちの子、地頭がよかったらこんな成績なんか取らないですよ」と必ずおっしゃるんです。

 でも、その子がいい大学に行くと、「地頭がよかったのよ。だってお父様もこうじゃない」ってみんな言うわけですよ(笑)。そこを僕はいつもおもしろいなと思っていて。「結局、人って結果によって、その人の才能や能力を判断しているに過ぎないよな」と感じるんです。

「坪田塾」入塾者の8割は本人の意思じゃない

坪田:伊藤さんがおっしゃったように、「階段を上りたいと思うか思わないか」は本当に重要です。さやかちゃんに関して言うと、スタート時点では聖徳太子を「せいとくたこ」と読んで、「かわいそうな女の子だね」と言っていたし、塾に入る気もさらさらなかったんですよね。

 実を言うと、うちの塾に来る子たちの8割以上は、親御さんに連れられて来ていて、本人の意思ではないんです。

尾原:そうなんですか。その状態から始まるんだ。

坪田:だから、入塾のハードルが一番高いんですよ。例えば、勉強が苦手だと認識している子に、「がんばったらすごく成績が伸びますよ。入りませんか?」と言うと、まず勉強できるようになりたいと思わないんです。

 すでに朝から夕方まで学校に行っているじゃないですか。宿題も山ほどあります。さらにそこから塾なんて、行きたくないですよね。

尾原:これ以上、荷物を背負わされたくないと。

坪田:そうです。「これ以上無理です」と。だから、成績が上がると言われても「別に上げたくない」って、全員が言うんです。

 みんな、階段を上りたくないんです。おっしゃるとおり、荷物を背負わされたくない。二宮尊徳(金次郎)のような状態で、三段、四段と積まれた状態で、「階段を細かくしたから上ってごらん」と言われても嫌なんですよ。

尾原:上るのがつらいということですね。