教育の本質は「憧れ」
坪田:じゃあ、なぜさやかちゃんはコロンビアの教育大学院に行ったのか。
彼女は大学院で認知科学を勉強していました。自分が「ビリギャル」として脚光を浴びて、多くの人から「地頭がよかった」とかいろいろ言われるけど、「なぜ自分は勉強しようと思うようになったのかを科学的に証明したい。そして、それを世の中に伝えたい」と思って、大学院に行ったんです。
結論として、僕が自分で言うのも微妙な話なんですけど、さやかちゃんが勉強する気になったのは、僕と話していて「知識がある大人って、すげーおもしろい」と思ったからだそうです。要は、憧れたらしいんですよ。それで、教育の本質は「憧れ」なんだなと気づきました。
伊藤羊一氏(以下、伊藤):そうね。
坪田:「こういう人になりたい」と思ったことで、その道を行こうとするんだなと思いましたね。
大人は「あんた、ちゃんと勉強しなさい」って言いがちじゃないですか。でもその人たちって、あまり勉強していないんですよ。だから、むしろそこを見せてあげる。「やってて楽しい。すごく成長してる」というのを見せていけばいいと思うんです。
伊藤さんのお子さんがうまくいった一番の理由は、お父さんがそういう人だからなんですよね。
尾原:なるほど。
坪田:「学んだら、こんなにおもしろくなるんだ」と。お父さんが周りの人たちからすごく慕われていて、いろんなところで活躍されているのは、直接ではないけどイデア(idea)のようなかたちで、ぼんやりとわかるじゃないですか。
そこに対して塾の先生が、ポンって背中を押した感じです。そうすると、すでに憧れがあるので、タタタタタって、上っていったんじゃないかなと思うんですよね。
伊藤:そういう意味で言うと、うちの娘ががんばろうと思ったきっかけは3つあるんです。1つ目は、大学への憧れです。高尚でも何でもないんだけど、「大学生」として遊んでいる姿への強烈な憧れがあった。
坪田:(笑)。
伊藤:そうすると、世間からいい大学と言われている大学に行きたいと。それは1つのすごいエネルギーになった。
2つ目に、僕の存在が無意識のうちにあったんじゃないかなと感じますね。
そして3つ目は、小林さやかさんの存在ですよ。「私もまったく同じだから、ビリギャルができるんだったら私もできる」と。
尾原:(笑)。
伊藤:だから、「やりたいこと」「憧れ」「こうすればできる」がハマると、きっかけになりますよね。
坪田: なるほどね。