岩本 新NISAでも、オルカン(オールカントリー)と呼ばれる、全世界の株式(うち米国が6割)に国際分散投資できる投資信託などがずいぶんと人気のようですね。ただ、海外への投資では為替リスクが必ず生じますから、最初から為替差益は放棄して、為替をフルヘッジしてリターンだけを取りいくという方法もあるかと思います。為替ヘッジをされない場合は、先にお伝えしたように円安・円高のタイミングに留意していただければと思いますし、為替のオプション取引を使うのも一案です。ただし「ノックアウト付き」など複雑なものは絶対に手を出さず、シンプルなドルを売る権利を買う「ドル・プット・オプション」などの利用が得策と考えます。

相場の世界は「山高ければ、谷深し」

生島 海外ものに投資する場合は、為替リスクに注意ということですが、そのほかに個人が投資を始める時に、どういうことに気をつけたらいいでしょうか? 日経平均もダウ(ダウ・ジョーンズ工業株平均。米国の株式市場の代表的な株価指数)もコロナ禍からの回復期に大きく上昇しました。

岩本 相場ですから、永遠の右肩上がりはあり得ず、どこかで調整が入るでしょう。相場の世界で「山高ければ、谷深し」という格言があるのですが、上昇すれば上昇するほど、またその勢いが強ければ強いほど、下落を始めた場合の下落幅にも注意しなければなりません。そうした下落を経てもなお株価が戻ってきて、さらに上昇する、時間とともに企業価値が高まっていく株を見つけ保有する、というのが鉄則でしょう。

生島 「山高ければ、谷深し」う~ん、意味深長ですね。

岩本 日本株だけに投資をしているので、自分には米国株は関係ないとおっしゃる方もおられるかもしれません。ただ、世界中のあらゆる金融市場は密接につながっています。大量に運用資金を扱う世界中のファンドは、1国だけ、1つの市場だけに投資をしているわけではありません。

 例えば米国の株式市場が急落しても、まだ日本株が高値を維持しているとなれば、米国株での損失を補填するために、まだ利が乗っている日本株を大量売却する、あるいは債券や他の商品を売って損失補填を、ということはよくあることです。その結果、売りが売りを呼んで全世界的な株価の急落やトリプル安(株式・債券・為替の3つの市場すべてで同時に値下がりが発生する状況)が起こります。

生島 投資をしている以上、何らかの関わりが出てくる。

岩本 はい。