株価を下げる米大統領選の最悪シナリオは?大統領選の株式市場への影響を徹底検証Photo:PIXTA

これまでの相場をけん引してきた大型テクノロジー株の決算を控え、株式市場のボラティリティが高まっているが、今年はさらにボラティリティを高めるイベントが待ち受けている。それは米国の大統領選挙だ。その動向と株価との相関について検証する。(UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント ジャパン・エクイティ ストラテジスト 小林千紗)

相場のリード役大型テック株の
決算控え市場のボラティリティ高まる

 米国株式市場では4月に入り、再びインフレ動向が懸念材料として浮上した。加えて、中東情勢にかかわる地政学リスクの高まり・原油価格上昇への懸念も加わり、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ開始時期が後ずれする可能性が意識され始めた。

 その結果、S&P500指数は3月28日の直近高値から4月19日まで6%下落し、フィラデルフィア半導体株(SOX)指数も高値から17%下落した。

 一方、マクロの経済環境や企業業績は堅調に推移している。求人件数は失業者数を上回る状況が続いている。企業業績の先行指標とされる全米供給管理協会(ISM)製造業景況感指数は3月に、2022年10月以降15カ月ぶりに、景況感の良しあしの判断の節目である50を上回った。

 これまで発表された1~3月期(第1四半期)決算の進捗は良好で、事前のコンセンサス予想を7%程度上回る推移となっている。我々は、第1四半期のEPS(1株当たり利益)は前年同期比7~9%増加し、24年通期では9%増益となると予想している。

 ただ、今後数週間はこれまで株価の上昇をけん引してきた大型テクノロジー株(得にAI関連銘柄)の決算が控えていることから、ボラティリティ(株価変動幅)の高い状況が続くと思われる。AIは今後10年間の構造的成長市場であるものの、AI市場に対する投資家の視点は期待値先行から実際の業績への影響を見極める段階にシフトしつつある。

 そのため、好業績であっても投資家の期待値に届かない場合は、短期的には株価のボラティリティが上昇するリスクが想定される。先日決算を発表したオランダの半導体製造装置メーカーや、台湾ファウンドリーの決算後の株価下落が事例として挙げられる。

 加えて、今年は株価のボラティリティをさらに高めるイベントが控えている。それは米国の大統領選挙だ。次ページ以降、大統領選挙と株価の相関について分析していく。