黒田日銀の金融政策は「異次元」と表現されるが、実はグローバルスタンダードな金融政策だ。期待に働きかけることで、円安、株高が実現し、企業業績の回復、賃金上昇へとつながっていく。2~3年でデフレは終わり、日本経済は復活するだろう。

「異次元の金融政策」とは
実はグローバルスタンダードな政策

「異次元」と形容される金融政策の中身をみると、既に米国や英国で行っていることと大きく変わらず、異次元という印象は受けない。要はグローバルスタンダードな金融緩和をするという内容である。

ながはま・としひろ
第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト。1971年生まれ。栃木県出身。早稲田大学卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。95年第一生命保険入社。日本経済 研究センターを経て第一生命経済研究所経済調査部へ異動。研究員、主任エコノミストを経て、08年より現職。主な著書は『日本経済のほんとうの見方、考え方』『中学生でもわかる経済学』『スクリューフレーション・ショック』『男性不況』など。

 具体的に見ると、まずは「マネタリーベース・コントロールの導入」。これまで、日銀が「無担保コール翌日物」(=金利)としていた金融市場調整の操作目標をマネタリーベース(量)に変更するというものである。

 次に「長期国債買い入れの拡大と年限長期化」。買い入れ国債の平均残存期間(償還までの期間)を9年とするFRB(米連邦準備制度)と比べると、日銀は3年弱と短かったため、長期国債買い入れの対象を広げ、買入の平均残存期間を現状の3年弱から、国債発行残高平均並みの7年程度に延長するというものである。

 3つ目が「ETF、J-REITの買い入れ拡大」。FRBはリスク資産である住宅ローン担保証券の購入を危機回避のために、2008年に始めたQE1(金融緩和)から導入している。FRBに比べると、日銀のリスク資産購入も量が足りないとし、ETFとJ-REITをそれぞれ年間約1兆円、300億円ずつ買い入れることとした。