現状では各社の思惑もあって、本当にこうした規格がオープンになるかどうかは未知数です。互いの連携が成り立たないさまを「バベルの塔」になぞらえる関係者がいるほど、難しいことではあります。
しかし、日本でもトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車の3社が車両のソフトウェアシステムの分野で連携を検討しているとの報道も出ています。各社の足並みがそろい、開発の効率化とクルマのデジタル化がより進むことが望まれます。
各社が取り組む
「クルマの知能化」とは
現在、多くの自動車メーカーは「車両の知能化」に力を入れています。クルマの知能化とは、車両が環境を認識し、判断を下し、自動運転やADASなどで適切に行動できるようにすることです。このプロセスには膨大な量のデータが不可欠で、センサーやカメラからの情報を活用してリアルタイムで反応する必要があります。
例えば、ADASでは車両の周囲のモノや人、道路の状況などを検知し、衝突回避のための操作を行います。また、自動運転技術では、それに加えて交通標識、周囲の車両の動きなど、さまざまなデータを解析して運転を行います。これらのデータは、車両の安全性と効率を大きく向上させるために極めて重要です。
SDVの役割は、こうしたデータを効果的に収集、処理、そして活用するためのプラットフォームを構築することにあります。SDVは、エッジ(車載システム)とクラウドのバランスを取りながらデータを管理し、必要に応じてデータをクラウドへ送信することで、エッジ側の処理能力とストレージの限界を超えることができます。この場合、リアルタイム性が求められるデータはエッジで処理し、長期分析やAI(ディープラーニング)に必要なデータはクラウドで処理することが一般的です。
ただ、クルマのデータは非常にセンシティブで、取り扱いには細心の注意が必要です。プライバシー保護とデータセキュリティは、SDVを成功させる上で欠かせない要素です。
クルマの知能化には、日本の自動車メーカー各社も取り組んでいます。トヨタはSDVのためのプラットフォーム「Arene」を子会社のウーヴン・バイ・トヨタで開発。UIや開発ツール群、SDK(ソフトウェア搭載のための開発キット)をそろえているところで、かなりの投資を行っています。
またソニーとホンダの合弁会社であるソニー・ホンダモビリティが手がけるBEVブランド「AFEELA(アフィーラ)」も、ソフトウェアファーストの発想からSDVを開発中です。同社は2025年には初の量産モデルの発売を予定しています。