SDVでも、同じように標準化を進めるべきという考えがあります。それがCOVESA(コネクテッドビークルシステムズアライアンス)です。これはコネクテッドカーのためのオープン標準と技術の開発を目的とした国際的な提携の枠組みで、世界中の自動車メーカー、サプライヤー、IT企業が参加して、コネクテッドカーの能力を最大化することを目指しています。

コネクテッドカーのための
オープン標準「COVESA」

 COVESAはSDVと密接に関連しています。COVESAの目標は、接続車両のためのオープンスタンダードと技術を開発し、推進することで、中でも特に車両のソフトウェアシステムに焦点を当てています。

 先述したGMのUltifiも、API(ソフトウェア同士が連携するためのインターフェイス)をCOVESAに提供しています。そもそも、各自動車メーカーは自社内の異なる車種をSDVとして扱えるようにするため、複数のハードウェアの差異を吸収できるように抽象化を行っています。しかし、このアプローチを各社がそれぞれ独自に行うことは、業界全体で見れば効率よくありません。ソフトウェアやハードウェアを提供するサプライヤーも、各社の仕様に合わせて別の開発をしなければなりません。そこで、COVESAにその統一が期待されているのです。

 これはまさにIT業界が過去に経験してきたことに他なりません。大昔のメインフレームの時代には、特定の1社から提供されるハードウェアと周辺機器、ソフトウェアでシステムが組まれた垂直統合型でしたが、ワークステーションやパソコンの登場でハードウェアとOS、周辺機器、アプリケーションは個別のものを組み合わせる水平分業型となりました。さらにインターネットの到来で、異なるシステムが連携して動くことが当たり前となっています。

 このような背景から、SDVもSDNと同様にネットワークを志向し、オープンな仕様に基づいて開発することが求められているのです。もちろん標準化によって、特に先行する企業の中には不利益を被るところも出るでしょう。今後、本格的にSDVが普及するかどうかは、いかにオープンな開発が広がり、ユーザーや社会がそれを望むかにかかっているでしょう。

 将来的に、自動運転やスマートシティなど「社会の中でのクルマ」としての位置づけを考えれば、車両間の連携(V2V:Vehicle to Vehicle)や自動車とインフラとの連携(V2I:Vehicle to Infrastructure)といった、車両とさまざまなものとが連携する「V2X」の実現が不可欠です。そこではオープン仕様が必須となってくるはずです。