なぜ「新しい学力」が求められるようになったのか
現代社会の働き手は、「指示されたことを従順に、勤勉にこなす能力」があるだけでは不十分。これからは「自ら効果的な対策を考え、実行できる能力」が求められます。
これらは労働環境の変化に起因します。日本経済が右肩上がりだった昭和から平成のはじめまでは、トップが立てた経営戦略や経営目標を指示通りに実行できる人が、社会における「いい人材」でした。そんな当時、就職でもっとも重視されていたのが「学歴」です。
受験生の数が膨大だったあの時代、受験の目的はふるい落とすことであり、どれだけ多くの知識を持っているかが勝敗を分けました。当時、厳しい受験戦争を勝ち抜いて難関大に進学できたのは、たくさんの知識を要領よく覚え、素早く答えを出す訓練を積み重ねてきた人でした。
企業が求める「指示されたことを従順に、勤勉にこなす人」と見事に合致していたのです。私たち親世代が慣れ親しんだ「暗記・計算・勤勉さ」といった学力は、経済のグローバル化とIT化以前の社会で必要とされた、「従順な働き手」を支えるための能力だったわけです。
しかし、今や「指示されたことを効率的にこなす仕事」は、AIやロボットが安価かつ正確に行ってくれます。指示待ちではなく能動的に課題に対処する力や、AIを使いこなして一人で大きな成果を上げたり、何役もこなしたりする力が求められているのです。
こうした社会の要望に応えるために、文部科学省は大がかりな学習指導要領の改訂を行いました。その目玉が、「アクティブ・ラーニング」です。
アクティブ・ラーニングにはさまざまな考え方がありますが、簡単にまとめると「子どもたちが中心となって、話し合いや活動を行いながら、課題に対する理解や考えを深めていこうとする学習スタイル」です。そこでは、教師は指示や課題を与えません。
子ども同士の意見や気づき、活動をつなぎ、それぞれの考えが深まるように促すことに徹します。アクティブ・ラーニングが目指すものは、自ら能動的に課題に対処していける働き手の育成です。
そして、この「能動的な働き手」を支えるのが、「自主性」「創造性」「モチベーション」といった「新しい学力」です。MARCH以上の「難関大」は、こうした社会の変化にいち早く対応し、入試改革を行ってきました。