外見と中身は
つながっている
大森美佐 著
――でも、先生も「人は外見じゃなくて中身だ」って思う?
そうですね……たしかに、恋愛関係はコミュニケーションが大切なので、どうしても内面の相性が大事になってきます。ですが、「見た目は内面のいちばん外側」という言葉があるように、外見と中身、どちらかが大事なのではなく、どちらもつながっているのではないでしょうか。見た目にも性格やその人の好みなどがある程度あらわれると思いますし、外見も相手を好きになるひとつの要素です。
――うん、そうだね。
ただ、外見だけで相手のすべてを判断したり、自分の理想を押しつけたりするのは望ましくありません。外見は、自分の力ではどうしようもない部分がたくさんありますよね。肌の色や髪質、骨格など、遺伝によって左右される部分も大きいです。「ルッキズム」という言葉は知っていますか?
――ルッキズム?
「ルッキズム」とは、人を外見で評価したり差別したりする思想のことです。外見がその人のいちばん重要な価値であるという意味で「外見至上主義」とも言われます。たとえば女の子でふくよかだとバカにされたり、男の子で背が低いといじめられたり、みんなが思う「美人」や「イケメン」とよばれる基準と違うと、ひどい対応をされることがありますよね。
――そういう空気はクラスにあるかも……。
一方で「美人」や「イケメン」と言われる側も、そうしたカテゴライズによって能力や内面を軽視されたり、周りにうとまれたりと、苦しい経験をしているケースもあります。「こんな体型じゃ好きな人に嫌われる」と危険なダイエットをしたり、「ロングヘアの子が好きだから恋人には髪を切らせない」と強制したりするなど、行き過ぎたルッキズムは、精神的にも身体的にも人を追いつめてしまいます。容姿から人を好きになることはかまいませんが、どんな外見でいたいか、どんな外見になりたいのかはその人の自由。相手の「こういう自分でいたい」という気持ちを尊重して、そのうえで関係性を築いていけたらいいですよね。
注:「現代日本の結婚と出産――第16回出生動向基本調査(独身者調査ならびに夫婦調査)報告書――」国立社会保障・人口問題研究所、2023年