ノロマなバッタには天敵に
襲われない必殺技があった

「名は体を表す」とはよく言ったもので、サバクトビバッタはその名の通り、砂漠を飛びまくるバッタだ。では、ラバー(ノロマ)の由来は何なのか。生息地とどのような関係にあるのか。

 ラバーは、身に危険が迫ると、一応、歩いたりジャンプしたりして逃走を試みるが、鬼気迫る必死さは感じられない。なんでそんなに余裕をぶちかましているかと言うと、毒を持っているのだ。天敵に捕まると、体の脇から泡状の毒を噴出させる。

 目立つ体色をしているのは、毒を持っているぞと自己アピールするためだと考えられている。コイツを食べた鳥、トカゲ、ワニはその不味さに吐き出し、中には死んでしまうものもいる。魚は飲み込むのを拒否し、吐き出す。天敵は「コイツはエサとして最悪」と学習するため、二度と攻撃することはないという。

 中には食べても平気な天敵もいて、哺乳類やヒキガエルはあまり影響を受けず、一晩に数匹食べても影響がないことが多い。無脊椎動物の天敵であるアリ、クモ、カマキリにもあまり毒の効き目がない。さらに、体が大きいこと自体が、天敵から逃れやすいと考えられている。毒を有し、比較的大きな体をしているからこそ、ノロマでも大丈夫ということらしい。

 しかしながら、毒という防御がまったく機能しない、ラバーにとって最悪な天敵がいる。寄生バエだ。捕獲したラバーを解剖したところ、1匹の体内から200匹ものウジが見つかったこともある。体の大きさに関係なく、寄生バエは卵を産みつけにやってくる。

 そんな寄生バエにも、一つ重要な弱点がある。ウジは乾いた土の中で蛹化しなければならない。水の中では蛹化できない。ラバーに寄生するハエや他の捕食者のほとんどが、陸上に住み、水中では生きられない。したがって、湿地の真ん中は、ラバーにとって捕食者や寄生者がいないパラダイスなのだ。ラバーがふ化後、陸上に留まらず、湿地に移動するのはこんなわけがあるようだ。