都立高校では、海外研修プログラムも、私立中高一貫校と同等のものが破格の料金で提供されています。私立中高一貫校で1000万円かかる長期留学プログラムが、都立高校生はわずか80万円で参加できます。東京の公立教育は税金の投入が異次元なのです。

 都立高校は、安価な海外長期留学制度、公費で無償の海外研修、全都立高校で導入された無償のオンライン英会話など、首都である東京の恵まれた財源の投入を行っています。

「少しでも良い教育を受けさせてあげたい」と無理して中学受験に「参戦」すると、都立高校受験ルートの子たちが経験できるプログラムへの応募資格を失い、逆に多様な経験のチャンスを失ってしまう事態になりかねません。

 私立中高一貫校ルートに子どもをやるなら、6年間の学費負担、通塾費用に加え、海外研修費用を捻出できる経済力を持っておきたいものです。それに対して、公費の補助が手厚い高校受験ルートなら、費用に左右されず、子どもに豊かな経験をさせてあげることもできるのです。

親の感情的な一言が
子どもの心に一生傷を残す

 令和時代の中学受験は、子どもだけでなく、親にとっても心身の耐久力が試される長期戦。親にとって最も重要なことが、「感情をコントロールする力」です。

 中学受験の過程では、子どもの弱点が浮き彫りになります。やりきれない宿題、不正行為、塾の無断欠席、危機意識の欠如、理解に要する時間の長さ、成績の低迷──厳しいことを言うようですが、中学受験に挑むと、長期間にわたって「わが子のダメな部分」と向き合うことになります。

 親御さんにお聞きします。自分の子どもの「ダメなところ」が露呈したとき、それを冷静に受け止め、対処することができますか。

 最近、「子どものやる気がない」と嘆く親御さんや、模試の結果を子どもに詰問する親御さんの話を頻繁に耳にします。私も実際、小学生の模試の結果を追及する親御さんの姿を、何度か目撃したことがあります。あのときの子どもの表情を、今でも忘れることができません。