小学生の子どもは基本的に親に従順です。また、自分の意見を十分に表現する手段をまだ持っていません。厳しいことを言われたら、受け入れることしかできないのです。しかし、その代償を親は後から払うことになります。過去に放たれた親のひと言が、成人してからも忘れられない傷となっている人は少なくありません。

 成人した教え子たちとご飯を食べたときに、親の話になることがあります。

「中学受験をしたときに、母親に言われたあのひと言は今でも忘れられないです。あの記憶があるから今でも母親を信頼できません」

 子どもを感情的に怒ってしまうなど、感情のコントロールに自信がない親御さんは、親子密着型の中学受験は避けたほうがいいでしょう。

 子どもが自己主張をしっかりできる年齢、つまり彼らが親と同等の「声」を持つまで待ったほうが賢明です。15歳くらいになると自我が確立し、親の過剰な行動に対してはしっかり「意見」をするようになります。

 子ども時代の楽しい思い出は時間とともに色褪あせるかもしれませんが、親から受けた傷は深く心に刻まれます。

 不幸なことに、多くの親はそのことを覚えていないのに、子どものほうは大人になっても記憶し続けています。何よりも大切なのは、親子間の健全な関係です。それを犠牲にしてまで、中学受験に挑む価値があるかどうか、いま一度考えてみる必要があるかもしれません。