年収1000万円の世帯であれば、子どもを中学受験させたいと考える親も多いだろう。しかし、私立中学では年収1000万円は“最低ライン”であり、現実は甘くない。年収1000万円世帯はどのような出費から教育費地獄に陥るのか。特集『年収1000万円の大不幸』(全13回)の#11では、中学受験から大学卒業までの家計のキャッシュフローを試算し、教育費が生活を圧迫する現実をつまびらかにする。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)
稼いでも教育費に
押しつぶされる家計
「共働きで世帯年収はそこそこあるのに、全然お金がたまらないんです」――。
大手企業の子会社に勤める山川由香さん(仮名)は、年収800万円で小学校低学年の子どもを2人持つワーキングマザーだ。共働きで資金は潤沢なはずなのに、家計にあまり余裕がない。
自分の服はよれよれになるまで着るし、駄目になればアウトレットまで買いに行く。持ち家で自家用車を持っているとはいえ、この年収層ならそこまでの負担にはならないはずである。
山川さんの家計を圧迫しているのは教育費だ。中学受験のための進学塾と英語塾に子どもを2人とも通わせている。これがトータルで月13万円の出費になる。
都市部に住む年収1000万円層の家庭は、小学校までは公立に通わせ、中学受験を念頭に置いて小学校時代に教育資金を投下するケースが多い。
小学校受験の場合は経営者や医者など年収2000万円近くが最低ラインになってくる。そこには手が届かなくとも、「中学受験ならいけるかも」と思うのが年収1000万円層である。
しかし、その認識は甘い。ファイナンシャルプランナー(FP)の藤川太氏は、「年収1000万円ならば、奨学金などを利用したり、家や車のコストを抑えたりすれば、私立中学から大学まで行かせられないことはない。ただ生活費の切り詰めをしたくなければ、最低でも年収1200万円はないと厳しい」と警鐘を鳴らす。
年収1000万円世帯は、なぜそんなに教育費に苦しめられることになるのだろうか。
そこでダイヤモンド編集部は、Money&You取締役でFPの高山一恵氏に、子ども2人に私立中学を受験させた場合の家計のキャッシュフローを試算してもらい、年収1000万円世帯が“教育費地獄”に落ちてしまう三つのポイントを検証した。