受験生写真はイメージです Photo:PIXTA

子どもの適性や努力はもちろんのこと、親もいろいろなことが試される「中学受験」。親は年々高騰化する教育費を用意するだけでなく、子どもを怒鳴りつけたりしない「精神のコントロール力」など心身の耐久力を身につけなければならないのだ。本稿は、東京高校受験主義(東田高志)『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと 4万人が支持する塾講師が伝えたい 「戦略的高校受験」のすすめ』(Gakken)の一部を抜粋・編集したものです。

上がり続ける
経済力のハードル

 中学受験を考える際、子どもの適性はもちろん重要ですが、同時に家庭の適性も考慮する必要があります。その中でも特筆すべきは、経済力のハードル。あきらかに以前よりも上がっています。

 中学受験は高校受験よりも費用負担が重く、平均通塾期間の長期化と、中高一貫校入学後も塾に通うダブルスクールの常態化によって、かかるお金は一段と増加しています。

 個別指導塾や家庭教師の併用もスタンダードとなりました。家庭教師に講師登録すると、集団指導塾だけでは足りないと焦る中学受験家庭からの依頼がたくさん舞い込んできます。

 塾はこれをビジネスチャンスとして入塾の早期化を促し、今や小学1年生からの通塾も増えています。受験準備に必要な費用は増加の一途をたどっています。

 せっかく合格してほっとしたのも束の間、中高一貫校進学後も塾へ通う「ダブルスクール」が当たり前となっており、これも費用増加の一因です。この現象は、東京大学受験指導塾の鉄緑会の塾生数の推移にも如実に現れています(下図参照)。

図表:鉄緑会の在籍生徒数の推移(人)同書より転載 拡大画像表示

 中学受験が終わったら、ゆっくり学校生活を楽しもうという雰囲気すら、東京の私立中学からは消えてしまいました。中学受験終了後もまた通塾です。

「中学入学生は学校の授業を無視して、塾の内職をしている」(高校から入学した生徒談)と、高校受験から入ったある生徒は、学校の授業を大事にしない中学入学生の姿勢に驚いたと話します。

 通塾は上位層だけではありません。受け身の勉強から抜け出せず、中学進学後に伸び悩む中高一貫校向けの塾が増加傾向にあります。

 私の教え子で中高一貫校生専門の学習塾でアルバイトをしているHさんによれば、入塾者の多くは学習意欲を失い、学校の授業についていけなくなった中高一貫校生。「高校受験がないことがデメリットになっている子が多い」と言います。特殊なカリキュラムに対応するという名目で、月謝は最低でも4万円と高額ですが、通塾生は多いようです。