通塾率が高まると、塾に通わないという選択は難しくなります。子どもから「周りはみんな通っている」という言葉を聞くと、親は「自分の子だけが塾に通わないのは問題ではないか」と考えるようになります。塾に通わないという選択には、周囲の流れに逆らう勇気が求められるのです。

世帯年収は最低1200万円
子ども2人なら2000万円

 私立中学受験に必要な家庭の「経済力」の目安はどれくらいでしょうか。

 東京における世帯年収としては、最低でも1200万円が必要だと一般にいわれています。しかし、この金額には住宅ローンの返済、老後の計画、海外留学や理系進学の可能性、家族構成といった多岐にわたる要素を織り込む必要があります。

 家庭によって状況が異なるこれらの要因を考慮すると、話はさらに複雑になります。

 2024年4月18日の『現代ビジネス』の記事では、教育事情に詳しいファイナンシャルプランナーが「都内で子2人を私立校に入れるならば、世帯年収1500~2000万円が最低ライン」と述べています。1500万円、複数の子どもがいるなら2000万円の年収が望ましいという声もあるのです。

 ひと昔前の週刊誌の調査によると、東京のトップ私立中学の平均世帯年収は、桜蔭中で約1736万円、海城中で約1628万円、聖光学院中で約1561万円となっています。これは中央値ではないため、子どもの数が1人で生活を質素に保てば、1200万円の年収でも進学は可能だと考えられます。

 私の見解では、東京で私立中学に子どもを進学させても問題がないのは、少なくとも年収1200万円以上を安定して確保できており、さらには海外研修プログラムなどの参加費用をスムーズに用意できる経済力を有する家庭です。

都立高校の手厚いサポートで
海外留学や研修に行く選択も

 令和に入り、海外研修プログラムへの参加費用は中高時代の新たな教育費になりつつあります。今は、都立高校も私立高校も海外研修プログラムが充実しています。