吉岡秀二・SMBC日興証券社長インタビューPhoto by Yoshihisa Wada

SMBC日興証券の元幹部が金融商品取引法違反(相場操縦)の容疑で逮捕されてから2年が過ぎた。近藤雄一郎前社長の後継として、今年4月に新社長に就いたのが吉岡秀二氏だ。「冷静沈着で聞く耳を持つ柔軟性がある」(近藤氏)と評される吉岡氏は、一体どのようにして会社を立て直し、反転攻勢を仕掛けるのか。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

3年前に監視委が本社を「ガサ入れ」
混迷の時代に銀行からSMBC日興へ復帰

――SMBC日興証券の相場操縦事件で、証券取引等監視委員会の強制調査が入ったのは3年前の2021年6月です。当時のことを覚えていますか。

 私は21年4月から22年3月まで(三井住友)銀行に出向していたので、情報はほとんどありませんでした。それを聞く立場にありませんでしたし、事実かどうかも分かりませんでした。

――では22年に日興証券に戻った後、何をされたのでしょうか。

 お客さまにご迷惑を掛けたことを反省し、近藤(雄一郎前社長)の強いリーダーシップの下、真因の特定と再発防止の体制整備を進めました。その結果を22年11月、業務改善計画書として金融庁に提出させていただいた。

 経営がリスクを認識する体制を強化し、それに対してリソースを振り向けていく。内部管理体制については、一線(事業部門など)、二線(管理部門など)、三線(監査部門)がしっかりとワークしているかをチェックするシステムを整えました。

 しかし体制が整ったとしても、金融は規制の変化に伴い常に新しい商品やサービスが生まれます。そうした変化に対応できるレジリエンス(回復力)が重要です。そのためにはやはり、企業文化として柔軟に修正できる集団にならなければならない。

 体制の枠組みはできましたが、真因の検証と企業文化の醸成については今後も対応していく必要があります。それを私が近藤から引き継いでしっかりとやっていく。従業員のマインドセットを促し、「おかしいものをおかしい」と言える環境づくりが私の大切な仕事だと思っています。

――従業員のマインドセットは、まだ道半ばですか。

 われわれは09年にホールセール(法人向け)部門を立ち上げ、さまざまなバックグラウンドの人を受け入れてきました。多種多様な人材に理解してもらえるよう、具体的な行動のありようを示す「グッドアクション事例」を作りました。それを全社的に話し合い、どうすればロールモデルになれるかを考えています。

 まずは私自身がロールモデルにならなければならない。それを体現できる人を登用し、評価する枠組みも整えていきたい。

SMBC日興証券の相場操縦事件は2019~21年、当時の幹部らが特定の10銘柄の株価を維持するため、大量に買い付けるなどの不正な株取引を行ったとされる。事件の舞台となったのが、エクイティ本部だ。実は吉岡氏は、事件発覚前にエクイティ副本部長だった。事件の兆候を感じ取れなかったのか。そして刑事裁判で無罪主張する元幹部らへの言及は――。次ページで明らかにする。