しかし本人の意識的記憶にないことが、本人の性格を作っている。

 自分は小さい頃から憎しみの空気を吸ったか、愛の空気を吸ったか。

「脅威志向」の高い家で成長した自分、生きることは脅威であった自分が見えてくる。

 嫌われている自分、人間嫌いな自分が治らない。不信感が拭えず、人を信じられる自分になれない。

 子どもの頃にこのamygdala(扁桃体)にいろいろな苦しい体験が詰め込まれている。

 それが大人になってから、何かのことをきっかけに再体験される。だからすぐに怒り、感情が不安定なのである。

 もちろん幼児期ばかりではない。その後の人生でも辛いことはある。その辛いことがあなたの神経回路に焼き付いている。

 だから急に幸福になるなどということもないし、急に心理的に強くなるなどということもない。

 頑固で不機嫌な老人を見て育った子どもの心のスナップ写真には、老いはそのようなものとして写し取られる。

「後にその子どもが老人になっても、この老いのイメージは変わらないかもしれない。元のイメージが、老いについて学ぶすべてのことの基盤になるのはありうることであって、たとえそれ自体を修正できたとしても、他の多くの知識がこの基盤の上に成り立っているので、新しい見方を身につけることはきわめてむずかしいのだ」

 高齢になって憂鬱になったときに、自分の無意識に気がつく機会を作るのである。

 悩みは自分が何に動かされているかがわかれば解決する。

 これがトラブルの原因であるとわかれば解決する。

まずは自分の要求が
非合理的であることを認める

 人は意志で動けるのではなく、無意識の必要性に動かされている。

 まず自分の要求が神経症的要求であることを頭で認める。その要求が非合理的であることを頭で認める。

 そして非合理的であるが、感情的には必要なところがあると認めて、それを解消する努力をするしかない。一気に解消することはない。