レッドブル・パワートレインズとのパートナーシップではバッテリーや電動化の技術開発に関わるのかもしれませんが、フォードは20年以上もF1から離れていました。少なくとも今のフォードに現代のF1に通用する技術が十分にあるとは考えられません。

 結局、新たなレギュレーションに対応したバッテリーをつくれるのはホンダが契約を切った海外のメーカーぐらいしかないと思います。でもホンダが契約を切ったのは、品質や性能面で切るだけの理由があったからです。そのメーカーに競争力があったら、そのまま継続していたはずです。だからホンダは自分たちでバッテリーをつくる、という判断をしたのです。

 エンジンの主要部品にしても、ホンダはある日本のメーカーにつくってもらっていました。でも、そのメーカーはF1の部品をつくっても大きな利益にはなりません。それでもホンダのF1のためにつくってくれたのは、量産車でのつながりがあるからです。会社の収益という面だけを考えれば、部品メーカーは積極的にF1に関わりたいとは考えません。だからサプライチェーンを構築するのは難しいのです。

自動車メーカーではない
レッドブルが抱える問題点

 レッドブルのようなレース専門会社が競争力のある大手の部品や原材料のメーカーと仕事をするとなると、自動車メーカーよりも多額の代金を支払うか、二流どころのメーカーと組むしかない。ホンダやメルセデス、ルノーなどの自動車メーカーは、部品や原材料のメーカーとも長い付き合いがありますし、量産で収益をこれだけ確保できているからF1でもお付き合いしますよ、という話になります。でも時にはホンダですら「ちょっと勘弁してください」と言われることもあるのです。それが現実です。

 量産部門でのつながりがまったくないレーシングチームがいきなりトップレベルの部品や材料を確保することができるのか?そういう問題に今からレッドブル・パワートレインズは直面すると思いますが、絶対に不可能とは断言できません。