フェラーリは少量生産のメーカーにもかかわらず、しっかりとサプライチェーンを構築できています。しかし、それはフェラーリが1950年にF1世界選手権が初めて開催されてから現在まで参戦し続けている唯一のチームだからです。彼らは長いモータースポーツ活動を通じて独自のサプライチェーンをつくり上げているのだと思います。

 レッドブルも長い時間をかければフェラーリのような体制を構築できるかもしれません。ただ、フェラーリのF1の歴史を振り返ると勝てない時期が何度かありました。それを耐えて参戦し続けてきたからこそ、サプライチェーンを構築できているのだと思います。マテシッツさん(編集部注/レッドブルの創設者ディートリヒ・マテシッツ)という強力なリーダーを失ったレッドブルにそれができるかどうかは注目していますし、自動車メーカーではないレッドブルが勝てるパワーユニットをつくり上げることができれば快挙です。その意味では楽しみでもあります。

2026年からF1に新規参戦の
アウディに勝機は?

 新規参入のアウディも大変だと思います。ドイツのアウディはスイスの中堅チーム、ザウバー(現ステークF1)を買収して2026年から参戦することを発表していますが、車体とパワーユニットの両方を開発しなければなりません。ホンダはパワーユニットの開発だけでも数年間、苦しみに苦しみました。コストキャップがある中で、F1経験がないアウディが数年でトップレベルのパワーユニットを開発できるのか。それはかなり高いハードルだと予想しています。

 GMはアメリカのレーシングチーム、アンドレッティ・グローバルと組み、キャデラックブランドで2025年または26年シーズンからの参戦を目指していましたが、F1のプロモーションやマーケティングを統括するFOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)はアンドレッティ・キャデラックのエントリーを拒否。ただ一方で、GMは28年シーズンからのパワーユニット・マニュファクチャラー(製造者)登録をFIA(編集部注/国際自動車連盟)に済ませているので、参戦の可能性は残っています。アメリカ最高峰のフォーミュラカーレース、インディカー・シリーズではエンジンビルダーのイルモアと組んでいますから、競争力のあるエンジンをつくれるかもしれませんが、バッテリーに関しては苦しむのではないかと思います。