「私、これからは都心に住むことになるでしょう。だから趣味をガーデニングから街の散策に変えることにしたの。老人ホームに閉じこもりになるのもつまらないから、アウトドア派に転向するのよ」

 その言葉どおり、久住さんは毎日のように外出して、近所に住む娘さん夫婦や孫とも親しく交流されているそうです。

 松島さん(仮名)は80代前半の女性です。数年前にご主人に先立たれて、広い戸建てでひとり暮らしをしていました。

 生前のご主人が書道教室を、松島さんが華道教室を自宅で開いていたため、ひとりで住むにはその家は大きすぎます。それでも、庭で花を育てるのが趣味だった松島さんは、広すぎる庭付きの戸建てを維持してきたそうです。

 しかし80代に入り、いろいろと無理が利かなくなってきました。そうして、ある日突然に倒れて入院することになったのです。

 入院してしまえばあとはお医者さんや看護師さんが面倒を見てくれるのですが、問題はその後です。

 松島さんには子どもがいなかったので、入院中に家の面倒を見てくれる人がいませんでした。数カ月後に退院した松島さんは、荒れてしまった庭を見て、もうひとり暮らしは無理だと決心して、家を処分することにしました。

 現在、松島さんは病院が運営する老人ホームで暮らしています。

 さいわい、後遺症はほとんど残らなかったので、趣味としてお花を活けることと、たまの旅行を生きがいとして楽しく暮らしているそうです。