シニアの新規事業立ち上げは、企業にも価値をもたらす。ルネサンス 人事部長の日野俊介さんは、こう語る。
「創業から45年がたって従業員の年齢層も上がり、今後10年間で毎年2桁の定年退職者が出てくることが分かっています。私たちは企業理念に『生きがい創造企業』を掲げていますが、働く我々の生きがいも追求したいんです。嫌だなと思いながら働き続けたり、『この年まで逃げ切ろう』という気持ちで働くことが果たして生きがいと言えるのか、否と。60歳を超えてもエネルギーを注げる環境、知識や経験を生かして働きがいを感じられる環境を継続していく必要があると考えています」
コロナ禍でハウスクリーニングは休業に
柔軟な事業転換の結果、億単位のコスト削減に成功
菱谷さんのハウスクリーニング事業は、新型コロナ感染予防対策のため、休業を余儀なくされた。しかし、ただ手をこまねいているわけにはいかない。自社のスポーツクラブの清掃応援にまわった。ハウスクリーニングと施設の清掃・メンテナンスは勝手が違う。資機材も十分とは言えない状況でのピボット。しかし、この柔軟な事業転換が大きな成果をもたらした。
「例えば、これまでは業務用のエアコンを1台清掃するのに約2万円を支払っていました。自社で清掃・メンテナンスができるようになったことで、億単位のコスト削減に成功したのです」(菱谷さん)
さらに興味深いのは、これら施設メンテナンスチームの活動が、ベテランの従業員はもちろん、若手からも人気を集め始めていることだ。日野さんは、「いろいろな活動が実っていることもあって、想定外に人気が出ちゃって(笑)」と驚きを隠せない。一人のチャレンジが、新たなキャリアの可能性を示すロールモデルとして、他の従業員にもポジティブな影響を与えているようだ。