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2024年、人口の多い団塊ジュニア世代は49~53歳になった。今後10年、毎年大勢の定年退職者が出る企業は少なくないはずだ。再雇用などで定年後も働き続ける人が増えているとはいえ、60歳以降どう働くのか、キャリアデザインに悩む50代は多い。60歳、70歳になったときに、みんな明るくいきいき働いているのだろうか?失われた30年とともに育ち、年金だけでは厳しいと聞かされて生きてきた世代の筆者にはどうしても良くなるイメージが湧かず、ある人物をたずねた。スポーツクラブの大手ルネサンスで、60歳直前に新規事業を立ち上げたという菱谷悟さんだ。(ノンフィクションライター 酒井真弓)

60歳からの新規事業
スポーツクラブ大手ルネサンスのチャレンジ

 人生100年時代。経済的不安や健康維持を理由に働き続けるシニアが増えている。働く環境も以前より整いつつある。2021年4月、改正高年齢者雇用安定法(70歳就業法)が施行され、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務になった。一方で、明るく生き生き働く老後の自分を想像できる人は、どれくらいいるだろうか。

 スポーツクラブ事業などを手がけるルネサンスは、50歳以上の従業員を対象に、定年後のキャリアを考える「ライフデザイン研修」を実施している。研修内容は、これまでのキャリアの棚卸し、社会環境やプライベートの変化の予測、経済面での将来設計、今後のキャリアデザインなど、ごく一般的なもの。特筆すべきは、この研修が座学ではなく、グループワークで参加者同士が刺激し合える場となっていることだ。参加者からは、「もっと早くこのような機会があれば良かった」という声も上がっており、今後はより若い世代にも対象を広げていきたいという。

 研修では、「年齢に一切関係なく、新たな提案をしていこう」というメッセージも発信。その上で、スポーツクラブ事業に次ぐ新たな柱を育てようと、全従業員を対象に新規事業アイデアコンテスト「ルネサンスチャレンジ(以下:ルネチャレ)」を開催。審査と社長プレゼンテーションを経て選ばれたアイデアは、起案者と経営企画部が中心となり、経営層と密に連携しながら事業化が進められている。

 2019年4月に定年を迎えた菱谷悟さんは、55歳のときに受講した「ライフデザイン研修」のグループワークをきっかけに「ルネチャレ」に応募。60歳の誕生日直前に、ハウスクリーニング事業を立ち上げた。

ルネサンス 施設開発部 施設メンテナンスAチーム 菱谷悟さん Photo by Mayumi Sakaiルネサンス 施設開発部 施設メンテナンスAチーム 菱谷悟さん Photo by Mayumi Sakai