「安倍氏はヒトラー」
「山上はヒーロー」という錯誤
しかも、実は安倍元首相銃撃事件ほど、「暴力では世界を変えられない」ということを世に知らしめるのに効果的なケースはない。
安倍元首相は生前、いわゆる左派リベラルの人たちから「日本を悪い方向へ導く犯人」として叩かれたてきた。それがよくわかるのがこんな言葉だ。
「安倍以外なら誰でも良い」「安倍は史上最悪の独裁者である」「安倍のせいで日本は破滅する」
これは『新潮45』(2015年9月号)の中で著述家の古谷経衡氏が紹介した、2015年の憲法記念日のトークイベントで繰り返された「安倍批判」である。在任中、憲法改正や安保法改正、特定秘密保護法などを次々と成立させたことで「独裁者」と叩かれて、以下のようにナチス・ドイツのヒトラーと重ねられることも多かった。
「ヒトラーに酷似…安倍首相を暗示するパロディー動画の中身」(日刊ゲンダイ15年6月21日)
「群馬でヒトラーを模した安倍晋三首相のコラージュ画像が映し出される 俳優の宝田明氏、元朝日記者が講演」(産経新聞18年5月3日)
ちょっと前、ウクライナ政府が公式SNSで流した動画でヒトラー、ムソリーニと共に昭和天皇を並べて「ファシズムとナチズムは1945年に敗北した」とテロップを流したところ、日本政府が抗議をして写真を削除させたように、国際社会ではヒトラーと同一視されるのは受け入れ難い侮辱だ。それを自国民やメディアから日常的にやられていたのが、安倍元首相だった。
だからこそ、銃撃事件で安倍元首相が殺害されたとき、山上被告を「独裁者の暴走を止めたヒーロー」と持ち上げる人たちがいたわけだ。例えば、とある作家の方は事件後のネット番組で「暗殺が成功してよかった」と発言をして炎上をした。