「不正」なのか「不適切」なのか
ジャッジは立場によって異なる

 しかし、組織不正が〈第三者〉によって判断されるものである以上、その判断を待たなければ何が原因であるのかは特定できません。特定できないとは言い過ぎかもしれませんが、かなり難しいというのが現状です。この場合、組織不正が起きたあとにこそ原因が分かるため、その時間の流れは逆さまになっていると言えます(結果から原因への流れ)。

 そして、このような原因とは客観的なものでは決してなく、見方によっては不正ではないものも含んでいます。というのは、組織不正に関する報道でもそうですが、〈第三者〉の立場から「不正行為」と呼ばれるものが多い一方で、その組織からは「不適切行為」と呼ばれるものが少なくありません。

 いずれも同じ行為を指したとしても、どの視点でそれらの行為を考えるのかによって呼ばれ方も異なりますし、呼ばれ方が異なることによって「本当にそれらは不正であったのか」という事実も揺れ動くことになります。

 例えば、2018年に神戸製鋼所による品質不正が問題となりました。同社は不正競争防止法違反(虚偽表示)に問われたことから、報道などで「不正行為」として取り上げられることがありました。

 その一方で、同社が発表している報告書では「不適切行為」と記されており、株主、従業員、地域住民、取引先などのステークホルダーに対して改善を行うことが同社HPに記されています。「不正行為」ではなく、「不適切行為」と記すことによって「今後、組織体制や作業手順などを適切化していくことが可能である」という可能性を対外的に示していたのです。

 以上より、原因とは組織不正が〈第三者〉によって判断された時に初めて分かるものであり、かつそれらの原因とは「不正行為」と「不適切行為」のように揺れがあるものと言えるかと思います。

法的根拠ある活動が
組織不正とされる場合も

 もう少しだけ、この〈第三者〉の判断について考えてみると、このような〈第三者〉は「不正行為」であることを証明するために法的根拠をもってそれらを訴えかけるように思います。ここでの法的根拠とは、地方自治体による条例や国会が制定する法律などのことです。