木製の人形写真はイメージです Photo:PIXTA

長年正しいと信じて行っていた組織活動が、ある日突然槍玉に挙げられる日がくるかもしれない。何故なら、不正行為であるかどうかは企業や組織自身ではなく、マスメディアやSNSのユーザーといった幅広い『第三者』が決めることになるからだ。官民問わず、誰もが監視者である時代、企業は不正にどう対峙していくべきなのか?※本稿は、中原 翔『組織不正はいつも正しい ソーシャル・アバランチを防ぐには』(光文社新書)の一部を抜粋・編集したものです。

それまでの熱心な取り組みが
ある日突然「組織不正」にされる

 そもそも組織不正というのは、〈第三者〉が判断するものです。組織で働く人たちは日頃熱心に仕事に取り組んでおり、ふとしたきっかけでそれらの取り組みが組織不正であると判断されるのです。

 この〈第三者〉というのは、最近であればSNSでその組織の取り組みを「組織不正ではないか」と発信する人のことも含みますし、それらを大々的に取り上げるマスメディアも含みます。少しだけ広い概念です。

 あるいは、もともとは組織で働いていたけれど(今でも働いているけれど)、その取り組みに納得することができずに内部告発といったかたちで問題にしようとする人のことも含んでいます。最終的には、その組織に何らかの疑いがあれば調査委員会が立ち上がり、最終的な判断を下します。それらも、多くが外部の専門家からなる委員会ですので「第三者委員会」などと呼ばれたりもします。

 このように、〈第三者〉とは「その組織の内外から、その組織の取り組みを問題視し、組織不正であると考える人たち」のことを指しています。この〈第三者〉とは、たった1人の個人から大きな組織に至るまで幅広いものであると言えます。

 ここで考えたいのは、組織不正の定義(何が組織不正であるのか)にとって、この〈第三者〉による判断がとても大きいということです。というのは、組織で働く人たちが自ら「私たちは組織不正を行っています」と宣言することはまれですし、それ以上に日頃熱心に取り組んできたことがまさか組織不正であったとは到底考えないだろうからです。

 このような場合に〈第三者〉は、それらの取り組みが組織不正に該当することを、根拠をもって訴えかけ、時には自ら調査するなどして、組織不正であるという判断が正しいものであるということを証明しようとするのです。

 この時にさらに重要となるのが、このような判断が下ったあとにこそ何が原因になっていたのか明らかになるという「逆さまになった時間」の流れです。

「不正のトライアングル」(編集部注/3つの要素「機会」「動機」「正当化」が結びつくことで不正が行われることを示したモデル、図1-1)やこれまでの研究ではあらかじめ原因があると考えられていました。つまり、何らかの原因があって組織不正が起きるという時間の流れです(原因から結果への流れ)。

図1-1:不正のトライアングル同書より転載 拡大画像表示