社員と会社がウイン・ウインの
「やる気重視経営」

 GBP本部の社員には、自律的なキャリア開発をどのように進めていってほしいとお考えですか。

 主に3つの方向性があります。まずは、目標を定めてみずからの専門性をどんどん高めていく方向性です。高度な専門性と経験値を備えた人材が揃うCoE(センター・オブ・エクセレンス)を形成できれば、当社の大きな強みになります。

 次に、先ほど少し触れたグループ会社や事業部門リーダーのビジネスパートナーになるという方向性です。各事業のドメイン知識や現場の状況を深く理解したうえで、人事やITといった自分の専門性をかけ合わせて事業課題を発見、解決し、利益拡大に貢献してほしい。

 そして3つ目は、業務オペレーションのマネジメントです。当社ではいま、海外を含むグループ全体で基幹システムの統合を進めています。当社の事業領域は、ほぼ半導体製造装置に集中していますので、本来、グローバルでのビジネスプロセス標準化は進めやすいはず。業務プロセスを標準化したうえで、基幹および周辺システムを統合し、AIなどの新しいテクノロジーも活用すれば、オペレーションを効率化できる余地は大きいはずです。その先、プロセスは自動化するとか、外部にアウトソースするといったことも考えられます。そのようなITやAIを駆使したオペレーションの最適化を構想し、かつグローバルでマネジメントできる人材が必要です。

 河合利樹社長兼CEOは、「やる気重視経営」を標榜していらっしゃいますね。

 先ほど述べたように当社は創業以来、「社員は価値創出の源泉」という考えを大事にしてきましたし、社員のエンゲージメント向上が当社の成長に直結すると考えています。

 社員エンゲージメントとは、要するに仕事を通じた生きがい、働きがいをどれだけ感じられるかということですよね。単に所属していることに対する満足度がどうかではなく、自分の能力を十分に発揮できて、成長の機会があり、会社や社会への貢献を実感できて、それを周りからも認められる。そういうエンゲージメントが高い社員は、心身の健康度とパフォーマンスも上がり、個人と会社がウイン・ウインの関係になれる。それを目指すのが、やる気重視経営だと考えています。

 社員のエンゲージメントスコアは年々上がり、離職率は国内で1%程度、グローバルで4%程度だそうですが、社員のやる気を高めるためにどのような取り組みを行っているのですか。

 ポイントは主に5つあります。第1に、自分の会社や仕事が、産業や社会の発展に貢献しているという実感です。当社は、60周年を迎えるに当たり、2022年に「半導体の技術革新に貢献する夢と活力のある会社」という新ビジョンを策定しました。TSVに基づいたこのビジョンの実現を目指すことで、産業や社会への貢献を実感できるはずです。

 第2に、会社の将来に対し夢と期待が持てることです。世界の半導体市場は2030年頃に1兆ドル(約150兆円)を超え、現在の規模から倍増すると予測されています。その成長市場において、当社は2027年3月期までに売上高3兆円以上、営業利益率35%以上、ROE30%以上という高い目標を掲げています。還暦を迎えて新進企業以上にこれだけ元気な会社は、世界的に見ても珍しいと思いますし、社員の夢と期待に十分応えられる会社だと自負しています。

 第3に、チャレンジできる機会です。幸いなことにビジネスが大きくなり、新しい仕事がどんどん増えています。当社では、これからの5年間(2029年3月期まで)で研究開発費は1兆5000億円以上、設備投資は7000億円以上と、未来に向けた成長投資をさらに強化していくことから、挑戦する機会はいくらでもあります。それに加えて、チャレンジを奨励し、ミスをしてもみんなで助け合う文化があります。このような環境を活かして、一人ひとりが積極果敢に取り組んでほしいと思います。

 第4は、成果に対する公正な評価とグローバルに競争力のある報酬です。グループ全体で職種と職責を明確に定義し、フェアな人事評価、グローバル水準でフェアな報酬を支払う。英語にするとPay for job at marketです。それはグローバル企業として当たり前のことかもしれませんが、これを進めてきたおかげで、製造業としてはトップクラスの報酬水準となり、ジョブマーケットでの競争力が高まりました。

 そして第5が、風通しのよい職場です。社員全員が自由闊達に建設的な意見を交わせる風土を醸成するのは、リーダーの役割です。CEOの河合は、社員集会を年間10回以上行っていますし、私たち執行役員も社員との座談会などに参加しています。