ストイックな上皇ご夫妻と異なる
令和流の公務のあり方を議論すべきだ

 天皇、皇后両陛下が、極端にストイックで濃密な日程で公務に励まれた上皇ご夫妻と同じスタイルにする必要はない。そもそも、雅子さまの体調からいってもまねするのは無理であるから、令和流の公務のスタイルを確立し、きちんと国民にも説明すべきだ。このことは、私が陛下のご即位の前から提案してきた。

 たとえば、国内や近隣国であれば、雅子さまは最低限の行事だけを陛下とご一緒された後、先に帰られる。また、欧米などの遠隔地であれば、雅子さまだけ先に出発し、現地で体調を整えていただくとかしたらどうかと思う。もし行事に遅れられるのなら、陛下だけの出席で先に始めてもいい。そのほうが、雅子さまにとっても楽であろう。

「上に立つ者がどこまで家族に気を使い、仕事とどちらを優先すべきか」は、古今東西むずかしい課題だ。おりしもNHK大河ドラマ『光る君へ』では、一条天皇の中宮定子への無限の愛情とそれに戸惑う廷臣たちが描かれている。

 英国ではウィリアム皇太子がキャサリン妃の病気に伴い、看病や子供たちの面倒が優先だとして公務をかなり離脱している。

 いずれにせよ、このような話は、宮内庁の中だけで悩むべき問題でなく、政府も関与し、国民の声も両陛下のご参考にしていただけるほうが私はいいと思う。英国ではオープンに議論され、賛否両論が寄せられている。

「平安時代の藤原道長たちのほうが、真剣に議論して知恵を出し合い、天皇にしっかり諫言もしていた」というのでは困るのである、

(評論家 八幡和郎)