この世界はポジションによって正義か悪か、加害者か被害者というのはまったく逆になる。つまり、「絶対的な正義」など存在しないのだ。そんな混沌とした世界で、異なる考えの者たちが殺し合いを避けて、共存共栄していくために発明したのが「政治」である。

 だから「政治家」というのは本来、「我々は被害者だ」「あいつは加害者だ」と叫んで大衆の憎悪を煽ってはいけない。「我々は被害者だと思っていたが、実は加害者の側面もあった」と対話を促し、現実的な平和の道を模索していく。

 今回、蓮舫氏はご自分のことを「理不尽ないじめを受けた被害者」だと思っている。そこから一歩進んで、ハラリ氏の言う「被害者と加害者は同じ」という政治の本質に気づくかどうかで、これからの蓮舫氏の政治家人生は変わってくる。

 例えば今回、SNSで定期的にダジャレギャグを投稿しているTVプロデューサーのデーブ・スペクター氏が、「蓮舫がTV司会者に転身→ヒステリーチャンネル」と投稿をしたところ蓮舫氏はこんな反論をした。

「私の闘いや私の姿勢を個人で笑うのはどうぞご自由に。(中略)私を支え、私に投票してくださった方を否定しないでいただけると嬉しいわ」

 政治家なので政治活動や政策についていろいろ言われても、人格まで攻撃するのは、信任してくれた有権者への侮辱なので許されないというわけだ。ただ、そこでデーブ氏に謝罪を求めるのなら、蓮舫氏もかつて侮辱をした政治家の墓前で謝らないといけない。安倍元首相だ。

 例えば、2017年に民進党代表だったとき、党本部で開催された国男女共同参画担当者会議の場で、蓮舫氏はこんなことをおっしゃった。

「いよいよ安倍さんの独裁、明らかになってきた。もういい加減同じ空気を吸うのがつらいと思えるぐらい」

 野党やマスコミは、首相なんだからこれくらいのことは言われて当然だという思いがある。だから日常的に安倍元首相を「独裁者」と批判して、「最近ヒトラーと顔が似てきた」なんてことを公の場でいう野党議員もいた。