日本を覆う「閉店ラッシュ」
なぜこんなことが起きているのか
ステーキ、タピオカ、高級食パン、唐揚げ、無人ギョーザ、モスバーガー、ミスタードーナツ、ガスト、幸楽苑……。
いったい何の言葉の羅列だと首を傾げる人も多いだろう。実はこれは近年、「閉店ラッシュ」が話題になった専門店や外食企業だ。パチンコ店や携帯ショップなどでも閉店ラッシュが話題になったので、そうした飲食業界以外の産業も入れれば大変な数になる。
つまり今、日本ではいたるところで「閉店ラッシュ」のラッシュが発生しており、ややこしい話ではあるが「閉店ラッシュラッシュ」状態なのだ。
そのように聞くと「やはり長引く景気低迷は深刻だ。一刻も早く消費税をゼロにするなどして景気回復をしないと、とんでもないことになるぞ」と国の無策に怒りを覚える方もいらっしゃるだろう。だが実は、近年の「閉店ラッシュ」は日本経済がどうのとか、政治が悪いとかいう話とは、ほとんど関係ない。
結論から先に申し上げてしまうと、さまざまな業界で閉店ラッシュが起きているのは、市場を度外視した供給過剰が元凶だ。もっと詳しく言えば「消費者が急速に減っているにもかかわらず、売れている商品や業態をパクる事業者が減っていない」ということである。
パクりが生み出す過剰供給ということでわかりやすいのは、やはり飲食業界だ。ご存じの方も多いだろうが、実は日本は飲食店が「異常」といえるほど多い。ちょっと古い調査だが、福岡県が総務省統計などをベースにして「人口1000人あたりのレストラン数」(平成27年時点)を調べたところ、東京が6.22店でトップ。次いでパリ(6.15)、ロサンゼルス(2.37)、ニューヨーク(1.39)、ソウル(1.37)、北京(0.47)と続く。他の都市は東京の足元にも及ばない。コロナ禍を経た今も、状況はそれほど大きく変わっていない。
だから、外国人観光客は日本の繁華街に衝撃を受ける。狭い雑居ビルの全フロアに小さな飲み屋やスナックがひしめき合っているような光景は、自国ではなかなかお目にかかれないからだ。