しかし、そういう人権感覚の方がバグっていて、世界的に見れば、これは先ほどの「ヒステリーチャンネル」どころではない人格攻撃だ。国によってはいくら相手が大統領や首相であっても、「政策論争と関係のない侮辱」として批判されるだろう。

 ちょっと前、ウクライナ政府が公式SNSにアップした動画でヒトラー、ムソリーニと共に昭和天皇を並べて「ファシズムとナチズムは1945年に敗北した」とテロップを流したところ、日本政府が抗議をして写真を削除させたように、国際社会ではヒトラーと同一視されるのは受け入れ難い侮辱だ。

 しかも、見方によっては、何の根拠もない「誹謗中傷」だ。本物の独裁者がいるロシア、中国、北朝鮮、アフリカの軍事国家などで、「あの独裁者と同じ空気を吸いたくない」なんて言ったらタダでは済まない。しかし、日本では、野党やマスコミはもちろん、一般のSNSユーザーも安倍さんをボロカスに叩いた。誰かが強制収容所に送られた人がいるのか。

 こんな「誹謗中傷」を受け続けて、安倍元首相の親族はもちろん、支持者、安倍政権を支えてきた人たちは深く傷ついた。だから、安倍さんの支持者たちは、野党やマスコミを「加害者」として憎んでいる。しかし、野党やマスコミはそんな自覚はゼロだ。むしろ、自分たちの方が「ヒトラー安倍の悪政に苦しむ被害者」だと思っている。安倍元首相が凶弾に倒れた後の報道が、今回のトランプ氏の暗殺未遂の報道に比べて、異常なほど「テロ犯擁護」に傾いていたことが、その動かぬ証拠だ。

 こういう「被害者と加害者は同じ」という争いの本質に、果たして蓮舫氏は今回の「理不尽ないじめ」を受けて気付いただろうか。

「ああ、今私がやられているような理不尽ないじめを、実は安倍さんもずっと受けていたのか」と我が身を振り返るようなことがあれば、蓮舫氏はこれまでの「厳しい追及をする野党政治家」から大きく変貌するだろう。

もちろん、逆もある。「なぜ正しいことをしている私がこんな理不尽ないじめに遭うのだ」という感じで被害者意識だけが肥大すれば、自民党支持者やメディアなど、自分を批判する全てのものが「敵」になるので、国政に復帰してもこれまで以上に相手を厳しく追及する「スーパー蓮舫」になる恐れもある。

……といろいろ言わせていただいたが、他人を攻撃してきた政治家が「理不尽ないじめ」を経てどういうなっていくのか、というのはかなり興味深い。「黙らない」ということも表明されているので、「政治家・蓮舫」の今後ますますのご活躍をお祈りしたい。