毒粉ミルク、漬物にタバコの吸い殻が混入、
廃棄物で作ったソーセージ……後を絶たない食品安全問題

 中国では長年、食品の安全が何度も問題になり、摘発され、その度に消費者はショックを受けてきた。最も人々の記憶に残っているのは、2008年9月の「三鹿粉ミルク事件」だろう。大手乳製品メーカー「三鹿集団」が製造した粉ミルクに結石などの病気を引き起こす化学物質メラミンが混入していたことが発覚。さらに他社の中国製粉ミルクからもメラミンが検出され、5万人以上の乳児が被害を受けた。この事件以来、中国国産の粉ミルクは敬遠されるようになり、海外製品の需要が急増した。筆者を含め、多くの在日中国人が、親戚や友人に「日本の粉ミルクを買ってきて」と頼まれた経験があるはずだ。

 CCTV(中国中央テレビ)の特番「3.15晩会」では、毎年、3月15日の「世界消費者権利デー」に合わせて、消費者の権利を侵害する企業の問題を暴露している。その中で最も取りあげられることが多かったのが、食品安全の問題である。

 2022年には、湖南省岳陽市にある漬物加工会社が取りあげられた。カラシ菜の漬物を作る際に、作業員が裸足やスリッパを履いたままで野菜を踏んでいたこと、作業員がくわえていたタバコの灰が漬けた野菜に落ちたり、吸い殻を投げ込んだりしていたことが明らかになった。さらには、規定の10倍以上の防腐剤を大量に使っていたことも判明した。これは「老壇酸菜」という漬物で、牛肉即席麺に入っているほか、肉炒めや酸菜魚などの料理には必須の、身近な食材である。

 今年の3.15晩会では、子どもや若者に人気の「肉ソーセージ」の食品偽装問題が取りあげられた。日本のフランクフルトに似た食材なのだが、実際には肉をほとんど使用せず、食品廃棄物(鶏やアヒルの骨を加工した粉)とデンプン、香料、添加物で作られていたことが発覚し、消費者に衝撃を与えた。「安くておいしい、と、毎日自分へのごほうびとして買って食べていたのに」「百歩譲って、肉が入っていなかったことまでは許せるとしても、食品廃棄物はやり過ぎだ!」といった悲痛な叫びがネットを賑わせた。

 最近中国のSNSでは、外国人旅行客が中国を旅する動画が人気を集めている。特に、中国各地のローカルグルメを堪能し、屋台などで食べた軽食を「おいしい!」と褒める動画は人気が高い。しかし、こうした食べ物に使われている油に石炭油が混じっていたり、ソーセージが食品廃棄物から作られていたりしたら、皆どんな反応をするのだろうか。