7月上旬、中国で発覚した石油混入食用油問題。国民の怒りが爆発し、食の安全への不信が再燃した。中国ではこれまでも何度となく食品安全問題が明るみに出ている。廃油を食品に再利用する、毒入り粉ミルク、水でかさ増しした肉、廃棄物で作ったソーセージ……中国は世界第2位の経済大国になったはずなのに、こうした問題がなくならないのはなぜなのか?(日中福祉プランニング代表 王 青)
中国を震撼させた調査報道
燃料を運んだタンクローリーで食用油を運ぶ
先日、中国のメディアによる衝撃的な調査報道が、中国社会に大きな波紋を投げかけた。石油燃料を輸送したタンクローリーが、タンク内部を洗浄しないままで食用油やその他の食品液体を輸送するという不正行為が10年以上も常態化していたというのだ。中国の食品安全問題は以前から指摘されてきたが、毎日口にする食用油が燃料で汚染されていたという事実は、国民に大きなショックを与え、人々は怒りを爆発させた。
中国の有力紙「新京報」の記者が約2カ月かけて追跡調査した。報道によると、寧東石炭油工場(寧夏回族自治区所在)から河北省の秦皇島まで石炭油(注:石炭を原料に生産された液体燃料、または粉砕した石炭を重油と混合したもの)を輸送していたタンクローリーが、石炭油を降ろした後、同じ河北省の食用油生産工場に移動し、洗浄作業を行わずに大豆油を積んでいたという。また、別のタンクローリーは寧夏から河北に輸送した石炭油を降ろしたあと、天津の「天津中儲粮油脂有限公司」の工場へ直行して大豆油を積んでいた。タンクローリーの運転手は、大豆油など液体の食品と、石炭油などの化学液体を同じタンクで洗浄せずに輸送することは業界の「公然の秘密」であると明らかにした。
さらに数日後、経済メディア「財新」は、この問題が道路輸送だけでなく水運でも行われていると報じた。これらの報道を受け、国務院食品安全委員会が調査に乗り出したという。