「偶然」とともに、新たなことにチャレンジし続ける

 3つ目は、会社員として定年まで働いた後に芸人に転身した「おばあちゃん」の例です。ちなみに「おばあちゃん」というのは芸名です。

 先日、日本経済新聞の夕刊に、「古希過ぎ、第2のキャリア」という表題で、芸名「おばあちゃん」こと沖原タツヨさん(77歳)が取り上げられていました。昨年(2023年)末に、私が、かねてより親交のある楠木新さん(『定年後』などのベストセラーの著書)とお会いした機会に、たまたま、芸人「おばあちゃん」のことを伺っていたので、記事が目に飛び込んできました。ちなみに1年前のキャッチフレーズは「芸歴5年、76歳の若手芸人」でした。

 記事によると、「おばあちゃん」は64歳で会社を辞め、舞台鑑賞などを楽しむ日々のなか、偶然、目にした高齢者劇団に心ひかれ、本格的に演技を基礎から学びたいと考え、いくつかの学校に応募したそうです。しかし、年齢制限で門前払いの連続。断られてもあきらめず、年齢制限のない吉本興業の養成所を見つけ、その門を、何と、71歳で叩いたとのことです。いまでは年に数回のステージに立つとともに、SNSなどを通じて人気が広がっているようです。人生経験を感じさせるネタは、味わい深さがありますし、人を楽しませると同時に、本人がイキイキした表情で楽しんでいる様子が伝わってきます。

 もともと、お笑いには興味があったようですが、「好奇心」を持ち続け(「持続性」)、年齢に臆することなく、やったことのない新しい世界に飛び込もうという「冒険心」、劇団での活動だけにこだわらなかった「柔軟性」、何とかなるだろうという「楽観性」があったからこそ、出会えた偶然をラッキーチャンスに変えることができたといえるでしょう。

 スーパースターでなくても、新たなことにチャレンジし続ける姿勢が素敵です。多くのシニアに勇気を与えるのではないでしょうか? お手本として、私自身もみならいたいと思います。