運やツキを呼ぶ「いい顔」に
なるための三つの要素

 老後も「人に恵まれる人」はズバリ、「いい顔」をしているのです。

 いい顔とは美男・美女という意味ではなく、声や態度、雰囲気を含めて「感じの良い顔」です。いい顔の人に取材に行くと、こちらも気分が盛り上がり、また次の取材先を紹介されたり、ヒントが得られたりすることが多いのです。いい顔が運やツキを呼んでいるのかもしれません。

 なぜ彼らは「いい顔」なのでしょうか。取材した実例をもとに、その理由を探ってみましょう。私は三つの要素があると思っています。

 まず一つ目、自分の「好きなこと」をやっている人です。魚について豊富な知識を持ち解説するさかなクン、肉体での芸を披露するなかやまきんに君、歴史学者の磯田道史さん。どの方も好きで好きで仕方がないことをしているのが顔つきに出ています。

 次に、「他人に喜んでもらう」という姿勢です。例えばスーパーボランティアの尾畠春夫さん。とても柔和で楽しそうな顔つきです。私も近寄って話を聞いてみたい気持ちになります。

 そして三つ目は、新しい自分を見いだした人。

 5月31日配信の記事「老後に“後悔する人”の共通点」では「もう一人の自分を持ちましょう」と述べました。会社勤めをしながら美容師資格を取得したり、秘書経験を活かしてマナー教室の講師をしていた例をご紹介しましたが、転身者は「いい顔」をしている人が多いのです。主体性を持って新たな自分を発見したことが、「いい顔」につながっていると感じました。

 一方で、東京、特に大手町や霞が関周辺を歩く方たちの顔は総じて厳しいものです。組織の中では役職や立場によってシビアな判断を迫られますから、厳しい顔つきになってしまうのでしょう。それでも、権限や仕事上の要請から人は寄ってきます。しかし老後はそうはいきません。切り替えないと、独りぼっちになってしまう可能性があるのです。

 柔和な「いい顔」に人が寄ってきますから、まずは笑顔を作ることを意識しましょう。そして主体的に生きる、好奇心を持って行動することも大切です。

自分の強みや得意分野は何か
通知表の「所見欄」もヒントに

 新たな人間関係を構築する手段としては、近所付き合いもありますが、苦手な人もいるでしょう。老後は「過去の自身の歩みから抜き出す」といいと思います。強み、得意分野ということですね。それは会社員の自分とは違う、「もう一人の自分」を見つけることにもつながります。

 自分には「何があるか」と、友人に尋ねてみてもいいでしょう。私は中学校の同窓会で「君が会社員をしながら本を書いているのはわかるわー!」と言われたのです。「なんでや」と聞くと、友人は「君は人の話を聞いて、色をつけて周囲に話すのが上手やった」と。「色はつけてないで」と反論しましたが(笑)。

 確かに取材でも子どもの頃、特に中学生くらいまでに得意だったことや好きだったことがポイントになる人が少なくありません。子どもの頃に絵を描くのが好きだったり、楽器の演奏に興味を持ったりしたのなら、きっとそういった面に興味、関心があるのでしょう。

 通知表の「所見欄」には、教師から見た生徒の様子が書かれていますから、これをヒントに新たな道に進んだ人もいます。