清流を間近に感じられる貴船(左京区)の川床。写真は料理旅館「ひろ文」の床席清流を間近に感じられる貴船(左京区)の川床。写真は料理旅館「ひろ文」の川床席

梅雨が明けました。連日の猛暑日・真夏日と熱帯夜で、今年は観測史上最も暑い夏になるかもしれません。祇園祭も後祭の巡行が終わり、学校は夏休み。エアコンが効いた室内も快適ですが、真夏の清涼感を求めて京都を巡りましょう。キーワードは水辺。手土産にしたい涼しげな京スイーツもご紹介します。(らくたび、ダイヤモンド・ライフ編集部)

鴨川納涼床で多彩な料理を堪能する

 三方を山に囲まれた京都盆地は、冬は底冷えの寒さ、夏はじっとりと蒸し暑くなります。毎年6月になると、昔ながらの京町家では「しつらえ替え」を行います。畳の上に網代(すだれ)を敷き、障子を簀戸(すど)に替え、軒下に簾をかけて部屋に風を通し、涼やかな夏仕様に替える慣わしです。らくたび京町家も、いまは夏仕様。簀戸に透けて見えるこけ庭の緑や、軒下に揺れる麻のれんが、いっときの涼を運んでくれます。秋冬用のしつらえに替わる10月はじめまでの間、料理処や甘味処など昔ながらの町家を訪ねるときは、夏のしつらえの納涼感にも注目してみてください。

夏のしつらえの「らくたび京町家」(中京区)夏のしつらえの「らくたび京町家」(中京区)

 新盆の東京では、連日のようにどこかで盆踊り大会が開かれているとか。地域によって夏の楽しみ方は異なりますね。京都で盛夏の納涼といえば、「納涼床」や「川床」がまず思い浮かびます。この二つ、どのように違うのでしょうか。

「納涼床」は、北は木屋町二条、南は五条通までの約2kmにわたり、鴨川のすぐ西隣を流れる小さなせせらぎ「みそそぎ川」の上に設けられます。毎年5月1日から9月30日まで、いまでは90軒近くの店が床を出しています。京料理をはじめ、イタリアン、フレンチ、タイ料理、焼き肉やすし店、そして居酒屋など、多彩なジャンルの料理がこの高床のテラス席で供されます。

 納涼床の始まりは、いまから約400年前。川の堤が整備され、東には祇園、西には先斗町の花街が栄えると、鴨川の河原一帯も歓楽街に。江戸中期には、約400軒もの茶屋が浅瀬や中洲に床机を並べ、夕涼みスポットとしてにぎわったようです。治水工事や台風、戦争で途絶えた時期もありましたが、昭和に入って復興されました。

 らくたび的おすすめ納涼床を三つ挙げてみましょう。創業300余年、老舗の風格が漂う「京料理ちもと」では、数寄屋造りの京都らしい空間で、旬のハモや京野菜をちりばめた絶品京懐石が堪能できます。床席も座敷スタイル。料理によっては板前さんが目の前で調理してくれ、ライブ感も楽しめます。

東華菜館」は、全国に1600もの名建築を遺(のこ)したウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計を手掛けた洋館を受け継ぐ北京料理店で、現役で動いているエレベーターは日本最古! スパニッシュ・バロック式の個性豊かな建築をめでながら、一品料理やコース料理が満喫できます。チャーハンとビールでちょっと一杯♪ の感覚で訪れるひとり客のリピーターも多く、床席の席料も不要なので、気軽に訪れてみては。

 よりカジュアルな納涼床なら、「B STORE 1st」がおすすめ。人気の気鋭店「イカリヤ食堂」(こちらも納涼床あり)が手掛けており、イタリアンをベースにしたコストパフォーマンスの高い料理が楽しめます。注目は、モーニング。炭火でカリッと焼き目をつけたトーストで作るサンドイッチがメインで、新鮮野菜をたっぷり使ったおしゃれな朝食です。

 鴨川に関して、話題をもう一つ。先日、若村が鴨川で「サケの遡上(そじょう)」ならぬ「鹿の遡上」を目撃。X(旧Twitter)に上げた動画が、安住紳一郎アナのTBS系朝の情報番組で取り上げられ、バズリました。涼やかな映像、ぜひご覧ください。

鴨川納涼床を代表する風景は四条大橋の上からがベスト(左)
「京料理ちもと」の納涼床席。川面を渡る風が心地いい(右)
鴨川納涼床を代表する風景は四条大橋の上からがベスト(左)、「京料理ちもと」の納涼床席。川面を渡る風が心地いい(右)