7月1日の「吉符入(きっぷいり)」から31日の「疫神社夏越祭」まで、1カ月かけて執り行われる夏の京都の一大イベント「祇園祭」。時代により少しずつ変化しながら1000年を超えて受け継がれてきた歴史ある祭りは、見どころが満載です。2024年祇園祭の三つの注目点と御利益、そしてグルメ情報をご紹介しましょう。(らくたび、ダイヤモンド・ライフ編集部)
年々往時に近づく「祇園祭」で押さえておきたい基本
祇園祭は八坂神社の神事です。平安時代初期の869(貞観11)年、全国的に蔓延(まんえん)した疫病の退散を願い、神泉苑に当時の国の数と同じ66本の矛を立て、祇園社(八坂神社の旧称)から神輿を迎えた祇園御霊会(ぎおんごりょうえ)が起源です。
平安時代後期から次第に規模が大きくなり、応仁の乱(1467~77年)で一時途絶えたものの、1500(明応9)年、町衆の手により再興。現代まで連綿と受け継がれています。2021年と、22年の2年間は、祭のハイライトとなる山鉾巡行が中止になるなど、新型コロナ禍によるパンデミックで一部制限されていたものが、徐々に制限が解かれ、24年はすべて解除。また14年には大船鉾が150年ぶりに、22年には鷹山が196年ぶりに復活するなど、祇園祭自体もかつての姿に戻りつつあります。
昔ながらの祭を継承しながら、時代に合わせた新しい試みも。京都市観光協会は23年、パイプ椅子を並べた従来の一般有料観覧席に加え、畳に座椅子、日よけパラソルをしつらえた和風特別席を新設しました。山鉾巡行を間近に見られる、主に海外富裕層向けのこの「プレミアム観覧席」を1席40万円(!)で販売して人気を博しました。今年はお酒飲み放題などを見直し、プライスダウンして1席15万円と20万円としたことで、地元では何かと話題を呼びました。今回は祇園祭の原点を見つめ直しながら、三つの注目点と御利益、そしてグルメ情報をご紹介してまいりましょう。
1カ月にわたって繰り広げられる祭りの中で最も注目度が高いのは、舶来の織物や刺繍など豪華な装飾品をまとった山鉾が連なり、都大路を進んで行くことから「動く美術館」と称される山鉾巡行(前祭17日、後祭24日)でしょう。
17日の前祭(さきまつり)では23基、24日の後祭(あとまつり)では11基の山鉾が巡行します。前祭の山鉾巡行では、先頭をゆく長刀鉾の稚児が、神域との境界を示す注連縄(しめなわ)を太刀で切り落として巡行の幕開けを告げる注連縄切り、巨大な山鉾が音頭取りの合図で勢いよく方向転換する辻回し(つじまわし)が圧巻です。
山や鉾の並び順は2日に京都市役所で行われるくじ取りで決まり、長刀鉾の稚児は毎年代わります。先述の注連縄切りの大役を担う長刀鉾のお稚児さんは、京都在住の12歳くらいまでの男児の中から、稚児1人と補佐役の禿(かむろ)2人が選出されます。毎年6月上旬、決定のニュース速報が町を駆け抜けると祇園祭が近づいてくるのを実感します。
歴代の稚児を見ると、呉服店や和菓子店など京都に根ざした会社社長の御曹司ばかり。今年は八坂神社の南にのれんを掲げる星付き日本料理店の関係者がそろい、話題となっています。長刀鉾の稚児は、正五位少将、十万石大名に並ぶ神位を授かります。正五位少将とは、平安時代でいえば天皇の清涼殿に上がることのできる殿上人。立派な肩書をもって祭りに挑みます。長刀鉾のほか、6人が稚児を務める綾傘鉾も見逃せません。