海外の人を交えた食事会で、注文や乾杯の提案をスマートにできたらいっそう盛り上がるというもの。しかし、冠詞を忘れると意味が変わったり、直訳では不自然にしか伝わらない表現もあるため、ネイティブに伝えるには工夫が必要だ。食事の席で活躍しそうな英語表現を例文と共に紹介する。※本稿は、キャサリン・A・クラフト著、里中哲彦訳『ネイティブにスッと伝わる 英語表現の言い換え700』(青春出版社)の一部を抜粋・編集したものです。
レストランに行ったとき
「とりあえず、ビールでいこう」
「とりあえず」の使われ方を見ていると、最終的にどうするかは別問題として、「いちおう/さしあたって(手始めに)/臨時(応急)措置として」の意味で用いられることが多いようです。
たとえばレストランでは、ウェイトスタッフとこんなやりとりをします。
◆A:Will that be all?
(以上でよろしいですか?)
B:For now, anyway.
(とりあえず、それで)
*for now「今のところ/さしあたり」
◆A:Do you know what you’d like to drink?
(お飲み物からお伺いしましょうか?)
B:Yes. To start off with, I’ll take a beer.
(はい。とりあえず、ビールください)
*to start off with「手始めに/最初に/まず」
*a beer「ビール1本〔缶・杯〕」
これらの例文に見えるように、for now/to start off with「手始めに/最初に/まず」が「とりあえず」のニュアンスをもっていることがわかります。
数人でレストランに行ったとしましょう。みんなで相談して、白ワインで乾杯することになりました。そんなときは次のように言います。
◆Let’s start off with some white wine.
(とりあえず、白ワインでいこう)
*start(off)with A「Aで始める/Aをもって開始する」
これを、“first”という副詞を使って言いあらわすこともできます。
◆Let’s have some white wine first.
*first(of all)「最初に/手始めに」
「しばらくのあいだ/当分のあいだ」(for the time being)を示唆する「とりあえず」もあります。
◆This will do for the time being.
(とりあえずはこれで間に合せよう)
*for the time being「当面のあいだ/さしあたって」
「とりあえず」が「至急/急いで/即座に/すぐに」(in a hurry/immediately/at once/right now)の意味で用いられることもありますね。
◆When she heard the news, she went to Matt in a hurry.
(その知らせを聞くと、彼女はとりあえずマットのところへ駆けつけた)
*in a hurry「急いで/あわてて」
◆I sent a condolence letter at once.
(とりあえずお悔やみ状を出しておいた)
*at once「ただちに/すぐに」
このように考えることで、私は日本語の「とりあえず」をなんとか使いこなせるようになったのでした。