シャイで人見知りを自認する佐野容疑者は、メッセージのなかでこう語っている。

「発信することや言葉にすることが苦手ですが、僕なりに頑張ってやっていきます」

 中学卒業後は鳥取県の強豪・米子北高校を経て、2019シーズンに当時J2のFC町田ゼルビアへ加入。ルーキーイヤーからボランチとして頭角を現し、2年目は累積警告による出場停止1試合を除く41試合すべてで先発。中盤におけるボール奪取能力の高さと名前をもじって「佐野回収」と呼ばれた。

病気を乗り越えて
代表選手の座を得たが…

 しかし、一転して4年目は後半戦をすべて欠場した。町田は疲労性腰痛と発表したが、実はオーバートレーニング症候群(=精神的・肉体的な疲労が積み重なり、回復しないまま慢性疲労状態になること)を発症していたと、鹿島への移籍が決まった2022年オフに町田の公式サイトで明かしている。

「このことを公表するかはとても迷いましたが、公表しようと思った理由は、たくさんの人たちのおかげで自分は戻ってくることができたからです。そして、そのたくさんの人たちへの感謝の気持ちを伝えたいと思うと同時に、自分と同じ状況の人たちの力になりたいと思ったからです」

 言葉通りに名門・鹿島でもレギュラーを射止め、昨年11月には森保ジャパンにも追加招集。ここまで代表戦4試合に出場している佐野は、2026年の北中米ワールドカップを見据えてこんな言葉を残していた。

「あそこ(日本代表)にいて、強くならない方がおかしいと思う。自分のように年代別代表に縁がなくてもA代表に選ばれると証明できたし、もっと、もっとやっていけるとアピールしていきたい」

 だが、昨夏にオランダへ渡った航大選手に続いて、活躍の場を念願のヨーロッパへ移そうとする矢先に事件が起きた。「容疑を認めている」とする報道通りならば、J2時代から努力を重ねて切り開いてきたはずのキャリアが、まさに自業自得で暗礁に乗り上げようとしている。