クラブ史上初めてJ2から昇格したばかりのFC町田ゼルビアが、シーズンの半分を終えたJ1戦線を堂々の首位で折り返した。開幕前の下馬評を完全に覆す快進撃の立役者は、同チームの指揮官だ。高校サッカー界の強豪、青森山田から異例の転身を遂げた黒田剛監督である。しかし、町田を率いて2シーズン目の黒田監督は今年6月、突如としてサッカーファンから激しいバッシングを浴びた。一体、町田ゼルビアと黒田監督に何があったのか――。(ノンフィクションライター 藤江直人)
J2から昇格したばかりの町田が
J1戦線で首位に!
シーズンのちょうど半分の第19節を終えたJ1を、昨シーズンまでJ2を戦っていた町田ゼルビアが首位で折り返した。同チームを率いる54歳の黒田剛監督は昨季、高校サッカーの強豪・青森山田から異例の転身を遂げ、わずか1年で「J2優勝」と「クラブ史上初のJ1昇格」を達成した。J1の舞台で戦う今季は「5位以内」を目標に据えているが、現在はその目標を上回る首位に立っている。
黒田監督は、町田の現在地をこう語る。
「あえて目標を高く掲げて戦ってきましたけど、ここまで首位争いをしている状況に驚きを隠せない一面があります。選手たちの奮闘や成長が本当に著しく、さらにいろいろな方々の力を借りながらの首位争いにありがたみを感じるとともに、今後もぶれずに、このまま進んでいければと思っています」
2月の開幕戦こそガンバ大阪と引き分けたが、第2節からは破竹の4連勝をマーク。第3節以降は常に3位以内をキープし、続く第4節で初めて首位に浮上した。その後も常勝軍団・鹿島アントラーズや昨シーズンの王者・ヴィッセル神戸などと競り合いながら、第15節以降は首位に立ち続けている。
19試合で叩き出した31得点はリーグで3番目に多く、逆に喫した16失点は3番目に少ない。攻守のバランスが取れている上に、4つの黒星を喫しながらも連敗はしていない。FC東京と東京ヴェルディの東京勢も連敗はゼロだが、負けた試合の次節ですべて勝っているのは町田だけだ。
そんな黒田監督は就任以来、失点と連敗を拒絶するメンタリティーを植えつけてきた。
球際における強度の高さで常に相手を打ち負かし、ボールを奪えばロングボールやショートカウンターを介して、一直線かつスピーディーに相手ゴール前へ攻め込む。まるで、歴代のサッカー日本代表を苦しめてきた「中東勢のサッカー」のような武骨さだ。そのサッカーを体現するなかで、ともに23歳のパリ五輪代表候補、MF平河悠やFW藤尾翔太のように個の力に長けた若い力も育ってきた。
しかし、である。一連のチームマネジメントによって町田を躍進させた指揮官に対して、ここにきて逆風が強まっている。